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「梅毒の治療」は“飲み薬だけ”で治る? 医師が使う薬と治るまでの流れを解説

 公開日:2025/11/23
梅毒の治療方法

梅毒は抗菌薬による治療で完治が可能な感染症です。病期や患者の状態に応じて薬の種類や投与期間が異なり、治療後も定期的な再検査が必要です。ペニシリン系抗菌薬が第一選択薬として使用されます。正しい治療を受け、再感染を防ぐためのポイントを理解しておきましょう。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

梅毒の治療方法

梅毒は抗菌薬による治療で完治が期待できる感染症です。病期に応じて治療期間や薬剤の選択が異なります。本章では具体的な治療法と治療中の注意点を説明します。

ペニシリン系抗菌薬による標準治療

梅毒の第一選択薬はペニシリン系抗菌薬で、国内ではアモキシシリンやベンジルペニシリンが使用されます。日本の診療ガイドラインでは早期梅毒(第1期・第2期)に対してはアモキシシリン経口4週間を基本とする、あるいは持続性ペニシリン(ベンザチンペニシリン)筋注を早期では単回投与とする選択が示されています。病期や薬剤、妊娠・アレルギー等により投与法は変わりますので、診療ガイドラインに従う必要があります。後期梅毒や神経梅毒では治療期間がさらに延長され、8週間から12週間の投与が必要となります。 持続性ペニシリン(ベンザチンペニシリン)筋注は国際的に早期梅毒の標準治療の一つで、早期梅毒では通常240万単位を単回筋注とされています。国内でも製剤の添付文書上の用法として早期梅毒で単回投与が示されています。ペニシリンアレルギーがある場合には、ドキシサイクリンやミノサイクリンなどのテトラサイクリン系抗菌薬が代替薬として用いられます。 妊娠中はテトラサイクリン系が使用できないため、マクロライド系抗菌薬が選択されることもありますが、効果がやや劣る点に注意が必要です。治療開始後24時間以内に発熱や悪寒、頭痛、筋肉痛などの全身症状が現れる「ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応」が生じることがあります。この反応は細菌が破壊される際に放出される物質による一時的なもので、通常数時間から1日程度で改善します。

治療効果の判定と再検査の重要性

治療終了後は定期的に血液検査を行い、抗体価の推移を確認します。非特異的検査であるRPR法の抗体価は治療により徐々に低下し、治療後6ヶ月から12ヶ月で4分の1以下に減少することが期待されます。抗体価が十分に低下しない場合や再上昇する場合には、治療不成功や再感染の可能性があります。 特異的検査であるTPHA法は治療後も陽性が持続するため、治療効果の判定には用いられません。治療中は性的接触を避け、パートナーも同時に検査と治療を受けることが再感染の防止に不可欠です。治療完了後も3ヶ月ごとに1年間、その後は6ヶ月ごとに検査を受けることが推奨されます。 妊娠中に治療を受けた場合には、出生後の児に対しても血液検査や身体診察を行い、先天梅毒の有無を確認します。治療が成功しても免疫は獲得されないため、再感染のリスクは常に存在します。感染を繰り返さないために、予防行動を継続し、定期的な検査を習慣化することが大切です。

まとめ

梅毒は適切な知識と早期発見により、完治が期待できる感染症です。初期症状は自覚しにくく自然に消失するため、感染リスクのある方は定期的な検査を受けることが重要です。感染経路や皮膚症状の特徴を理解し、少しでも気になる症状があれば速やかに医療機関や保健所で検査を受けてください。治療は抗菌薬により確実に行われ、早期治療であれば後遺症を残さず治癒します。パートナーとともに検査と治療を受けることで、再感染や感染拡大を防ぐことができます。本記事の情報は一般的な知識であり、個別の診断や治療方針については医療機関での相談が必要です。

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