「梅毒の検査が“偽陽性・偽陰性”になる理由」とは? 見落としやすい危険サインを医師が解説

梅毒検査では、まれに偽陽性や偽陰性が生じることがあります。抗体の検出時期や他疾患の影響によって誤差が出るため、結果の解釈には注意が必要です。臨床症状や追加検査を組み合わせて正確に診断することが大切です。本章では、検査結果を正しく理解するためのポイントを解説します。

監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
検査結果の偽陽性・偽陰性
血清学的検査の結果は必ずしも100%正確ではなく、偽陽性や偽陰性が生じる可能性があります。結果の解釈には臨床所見や追加検査が重要です。本章では検査結果の読み方と注意点を解説します。
偽陽性が生じる原因と対処法
非特異的検査であるRPR法やVDRL法は、梅毒以外の原因でも陽性を示すことがあります。これを「生物学的偽陽性」と呼び、妊娠や膠原病、HIV感染、ワクチン接種後、高齢者などで見られます。自己免疫疾患や慢性肝疾患、薬物使用なども偽陽性の原因となります。
偽陽性を鑑別するためには、特異的検査であるTPHA法やFTA-ABS法を実施します。特異的検査が陰性であれば、偽陽性と判断されます。RPR法の抗体価が低い場合にも偽陽性の可能性が高まります。確定診断のためには複数の検査法を組み合わせ、臨床症状や性的接触歴を総合的に評価します。
偽陽性と判断された場合でも、原因となる基礎疾患の精査が必要な場合があります。妊娠中の偽陽性は母子感染のリスク評価に影響するため、慎重な判断が求められます。
偽陰性とウインドウピリオドの関係
感染初期のウインドウピリオド中には、抗体がまだ検出可能なレベルに達していないため、検査が陰性となることがあります。感染から3週間以内に検査を受けた場合、偽陰性のリスクが高まります。症状がある場合や感染リスクのある接触があった場合には、初回検査が陰性でも数週間後に再検査を行うことが推奨されます。
免疫不全状態にある方では抗体産生が遅れることがあり、偽陰性の期間が延長する可能性があります。非特異的検査が陰性で特異的検査が陽性の場合、治療後の状態や過去の感染を示唆しますが、まれに感染初期の段階で特異的検査のみが先行して陽性化することもあります。
症状と検査結果が一致しない場合には、追加検査として核酸増幅検査や暗視野顕微鏡検査が考慮されます。これらの検査は病変部位から直接細菌を検出するため、感染初期でも診断が可能です。臨床的に梅毒が強く疑われる場合には、検査結果を待たずに治療を開始することもあります。
まとめ
梅毒は適切な知識と早期発見により、完治が期待できる感染症です。初期症状は自覚しにくく自然に消失するため、感染リスクのある方は定期的な検査を受けることが重要です。感染経路や皮膚症状の特徴を理解し、少しでも気になる症状があれば速やかに医療機関や保健所で検査を受けてください。治療は抗菌薬により確実に行われ、早期治療であれば後遺症を残さず治癒します。パートナーとともに検査と治療を受けることで、再感染や感染拡大を防ぐことができます。本記事の情報は一般的な知識であり、個別の診断や治療方針については医療機関での相談が必要です。