「梅毒を放置」するとどうなるかご存じですか? 最悪の場合、死に至ることも…【医師監修】

梅毒を放置すると、数年から数十年をかけて全身に影響を及ぼし、神経障害や心血管疾患など重篤な合併症を引き起こします。これらの後期梅毒は治療しても機能回復が困難な場合があります。早期治療が進行を防ぐ唯一の方法です。進行した場合のリスクを理解し、予防意識を高めましょう。

監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
治療せずに進行した場合
梅毒を治療せずに放置すると、数年から数十年の経過を経て重篤な合併症を引き起こします。後期梅毒や神経梅毒は生活の質を著しく低下させるため、早期治療が重要です。本章では進行した梅毒の合併症を解説します。
第3期梅毒と結節性病変の形成
感染から3年以上経過すると、第3期梅毒に移行します。この時期には「ゴム腫」と呼ばれる結節性病変が皮膚や骨、内臓に形成されます。ゴム腫は中心部が壊死して潰瘍を形成し、周囲組織を破壊します。皮膚のゴム腫は顔面や四肢に多く、治癒後に瘢痕を残します。
骨のゴム腫は長管骨や頭蓋骨に生じ、骨の変形や病的骨折を引き起こします。鼻や口蓋のゴム腫は軟骨や骨を破壊し、顔面の変形や嚥下障害、構音障害をもたらします。肝臓や脾臓、心臓などの内臓にもゴム腫が形成され、臓器機能の低下につながります。
現在ではこの段階まで進行する症例はまれですが、治療が遅れた場合や免疫不全状態にある方では進行が早まる可能性があります。第3期梅毒の病変は不可逆的な障害を残すことがあり、治療により細菌を排除しても機能回復が困難な場合があります。
神経梅毒と心血管梅毒のリスク
梅毒トレポネーマが中枢神経系に侵入すると、神経梅毒を発症します。無症候性神経梅毒は髄液検査でのみ診断され、症状を伴いません。症候性神経梅毒には髄膜血管梅毒、進行麻痺、脊髄癆などがあり、頭痛や意識障害、痙攣、運動麻痺、認知機能障害、視力障害などが現れます。
進行麻痺は人格変化や認知症様症状を呈し、日常生活に重大な支障をきたします。脊髄癆は脊髄後根の障害により、歩行障害や感覚異常、膀胱直腸障害を引き起こします。心血管梅毒は大動脈に炎症を生じ、大動脈瘤や大動脈弁閉鎖不全を引き起こします。大動脈瘤が破裂すると生命に危険が及びます。
これらの後期合併症は不可逆的な障害を残すことがあり、治療により細菌を排除しても機能回復が困難な場合があります。早期発見と早期治療が合併症を防ぐための手段となります。神経梅毒やがん血管梅毒は現在では発症頻度が低下していますが、無治療で長期間経過した場合には依然として発生する可能性があります。
まとめ
梅毒は適切な知識と早期発見により、完治が期待できる感染症です。初期症状は自覚しにくく自然に消失するため、感染リスクのある方は定期的な検査を受けることが重要です。感染経路や皮膚症状の特徴を理解し、少しでも気になる症状があれば速やかに医療機関や保健所で検査を受けてください。治療は抗菌薬により確実に行われ、早期治療であれば後遺症を残さず治癒します。パートナーとともに検査と治療を受けることで、再感染や感染拡大を防ぐことができます。本記事の情報は一般的な知識であり、個別の診断や治療方針については医療機関での相談が必要です。