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「オーバードーズ」が引き起こす精神疾患リスクへの影響とは【医師監修】

 公開日:2025/11/06
「オーバードーズ」が引き起こす精神疾患リスクへの影響とは【医師監修】

オーバードーズは既存の精神症状を悪化させるだけでなく、新たな精神疾患を発症させるリスクも伴います。薬物誘発性精神病や幻覚妄想状態、双極性障害様の症状など、さまざまな精神症状が現れることがあります。ここでは、薬物乱用と精神疾患の関連について解説します。

日浦 悠斗

監修医師
日浦 悠斗(医師)

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福井大学医学部卒業。血清蛋白質と精神疾患の関係について研究をおこなう。日本精神科学会専門医。

オーバードーズによる精神疾患の発症リスク

オーバードーズは既存の精神症状を悪化させるだけでなく、新たな精神疾患を発症させるリスクも伴う可能性があります。ここでは、薬物乱用と精神疾患の関連について解説します。

薬物誘発性精神病と幻覚妄想状態

大量の薬物を摂取すると、一時的に幻覚や妄想といった精神病症状が現れることがあります。これを薬物誘発性精神病と呼びます。抗コリン作用を持つ薬物や中枢刺激作用のある成分を含む市販薬を過量摂取した場合に見られやすい症状です。このような状態では、実際には存在しないものが見えたり聞こえたりする幻覚を体験し、被害的な内容の妄想を抱くこともあります。 多くの場合、これらの症状は薬物が体内から排出されると軽快します。しかし、繰り返しオーバードーズを行うことで、薬物使用を中止した後も精神病症状が持続するケースが報告されています。特に統合失調症の素因を持つ方では、薬物乱用をきっかけに統合失調症が発症する可能性が指摘されています。 また、デキストロメトルファンなどのNMDA受容体拮抗作用を持つ成分は、解離性の体験をもたらすことがあります。自分の身体から離れたような感覚や現実感の喪失といった症状が現れ、一時的に苦痛から逃れることができると感じる方もいます。しかし、このような体験を繰り返すことで、離人感・現実感喪失症候群といった解離性障害を発症するリスクが高まる可能性があります。これらの症状が持続する場合は、精神科や心療内科などの専門医療機関を受診することが重要です。

双極性障害や人格変化のリスク

薬物乱用は気分の不安定性を助長し、双極性障害(躁うつ病)様の症状を引き起こすことがあります。気分が高揚して多弁になったり、活動性が亢進したりする躁状態と、抑うつ状態が交互に現れる場合があります。もともと双極性障害の素因がある方では、薬物乱用によって症状が顕在化したり悪化したりする可能性があります。 長期的な薬物乱用は、人格にも影響を及ぼす可能性があります。衝動性が高まり、感情のコントロールが困難になることがあります。些細なことで怒りを爆発させたり、計画性のない行動を取ったりするようになる場合があります。また、他者への共感性が低下し、対人関係のトラブルが増加することもあります。これらの変化は、境界性パーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害といった人格障害の特徴と類似しており、診断や治療を複雑にする場合があります。 さらに、慢性的な薬物乱用によって脳の報酬系が変化し、薬物以外のものから喜びや満足感を得ることが困難になる場合があります。趣味や人間関係、達成感といった本来楽しいはずの体験に対して無関心になり、生活全体が薬物を中心に回るようになることがあります。このような状態は、アンヘドニア(無快感症)と呼ばれ、治療において大きな課題となります。

まとめ

オーバードーズは市販薬や処方薬を過量摂取する行為で、身体・精神の両面に深刻な影響を及ぼす可能性があります。治療には身体管理、離脱症状への対応、認知行動療法などの心理社会的アプローチが必要です。精神保健福祉センターや依存症外来など、専門的な相談先を活用し、早期に適切な支援を受けることが回復への鍵となります。 オーバードーズに関する悩みや不安がある場合は、一人で抱え込まず、医療機関や相談窓口に連絡してください。適切な支援を受けることで、回復への道を歩むことができます。

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