オーバードーズは摂取直後から身体にさまざまな症状を引き起こす可能性があります。中枢神経系への作用による意識障害や呼吸抑制、循環器系への負担による不整脈、消化器系への急性障害など、重篤な症状が現れることがあります。ここでは、急性期に現れる身体的な影響について詳しく説明します。
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福井大学医学部卒業。血清蛋白質と精神疾患の関係について研究をおこなう。日本精神科学会専門医。
オーバードーズが身体に与える急性影響
オーバードーズは摂取直後から身体にさまざまな症状を引き起こします。ここでは、急性期に現れる身体的な影響について説明します。
中枢神経系への影響と意識障害
多くの医薬品は中枢神経系に作用するため、過量摂取によって意識レベルの低下が起こる場合があります。軽度では眠気やふらつきから始まり、重度になると昏睡状態に陥ることがあります。特に睡眠薬や抗不安薬の過量摂取では、呼吸中枢への抑制作用によって呼吸が浅くなり、重篤な場合は呼吸停止に至る危険性があります。
意識障害の程度は、GCS(グラスゴー・コマ・スケール)やJCS(ジャパン・コマ・スケール)といった評価尺度を用いて判定されます。意識が混濁している状態では、誤嚥性肺炎のリスクも高まるため、医療機関での適切な管理が必要です。意識レベルの低下が見られる場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
また、抗コリン作用を持つ薬物を過量摂取すると、錯乱や幻覚、せん妄といった精神症状が現れることもあります。抗ヒスタミン薬や一部の風邪薬に含まれる成分がこれに該当します。このような状態では自傷や他害の可能性もあるため、周囲の方は速やかに医療機関に連絡する必要があります。
循環器系・消化器系への負担
オーバードーズは、心臓や血管系にも大きな負担をかける可能性があります。一部の抗うつ薬や風邪薬に含まれる成分は心拍数の増加や不整脈を引き起こすことがあり、重症例では心室頻拍や心室細動といった致死的不整脈が発生して突然死に至るケースも報告されています。また、血圧の異常な上昇や低下も見られ、脳出血や循環不全のリスクが高まる場合があります。
消化器系への影響も深刻です。アセトアミノフェンを含む解熱鎮痛薬を大量摂取すると、肝細胞が壊死し急性肝不全を引き起こす危険性があります。肝不全は黄疸や腹水、意識障害を伴い、緊急の治療介入がなければ死亡に至る可能性があります。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の過量摂取では、胃粘膜障害による吐血や下血が見られることがあり、腎機能障害も併発する場合があります。
さらに、大量の錠剤を一度に服用することで、物理的に胃腸への負担が増します。嘔吐や腹痛、下痢といった消化器症状が現れ、脱水や電解質異常を引き起こすこともあります。嘔吐物による気道閉塞や誤嚥も生命を脅かす合併症の一つです。これらの急性症状は、摂取後数時間から数日以内に発現することが多いため、早期発見と迅速な対応が重要です。症状が現れた場合や過量摂取の可能性がある場合は、直ちに医療機関を受診してください。
まとめ
オーバードーズは市販薬や処方薬を過量摂取する行為で、身体・精神の両面に深刻な影響を及ぼす可能性があります。治療には身体管理、離脱症状への対応、認知行動療法などの心理社会的アプローチが必要です。精神保健福祉センターや依存症外来など、専門的な相談先を活用し、早期に適切な支援を受けることが回復への鍵となります。
オーバードーズに関する悩みや不安がある場合は、一人で抱え込まず、医療機関や相談窓口に連絡してください。適切な支援を受けることで、回復への道を歩むことができます。