目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 配信コンテンツ
  3. 「大麻依存」は意思の力だけでは治らない? 有効な認知行動療法とは

「大麻依存」は意思の力だけでは治らない? 有効な認知行動療法とは

 公開日:2025/11/07
大麻依存症の治療アプローチ

大麻依存からの回復には、薬物療法だけでなく心理的サポートが重要です。認知行動療法や動機づけ面接法など、実証的に効果が確認された治療法の実際と、今後の研究動向についてわかりやすく紹介します。

公受 裕樹

監修医師
公受 裕樹(医師)

プロフィールをもっと見る
【経歴】
金沢大学医学部卒業
精神科単科病院を経て、現在都内クリニック勤務
精神保健指定医、産業医
【免許・資格】
精神保健指定医、産業医

大麻依存症の治療アプローチ

依存からの回復には、心理療法や社会的サポートなど多面的な治療が欠かせません。治療法の現状と今後の展望をまとめます。

心理社会的介入の実際

大麻依存症の治療において、心理社会的介入は中核的な役割を果たします。認知行動療法(CBT)はエビデンスの蓄積された治療法の一つで、使用に関連する認知の歪みを修正し、健康的な行動パターンの確立を目指します。 患者さんは使用の引き金となる状況や思考パターンを特定し、それに対する適切な対処法を学習します。また、渇望への対処技術、拒否スキル、問題解決技法などの具体的なスキルトレーニングが行われます。 動機づけ面接法(MI)は、患者さんの変化に対する内発的動機を高めるための技法です。治療者は共感的で非対立的な姿勢を保ちながら、患者さん自身が変化の必要性と能力を見出せるよう支援します。両価性の探索、変化への障壁の特定、自己効力感の向上などが主要な技術として用いられます。

薬物療法の現状と今後の展望

現在のところ、大麻依存症に対する承認された薬物療法は存在しませんが、複数の薬物が研究されています。離脱症状の軽減を目的として、ガバペンチン、デスベンラファキシン、リチウムなどの使用が報告されていますが、いずれも限定的な効果にとどまっています。 N-アセチルシステイン(NAC)は、グルタミン酸系の調節を通じて渇望の軽減効果が期待され、臨床試験が進められています。合成カンナビノイドであるドロナビノール(THCの合成誘導体)やナビロンは、離脱症状の軽減と渇望の軽減を目的として研究されていますが、依存形成のリスクもあり、慎重な評価が必要です。 併存疾患に対する薬物療法は重要な治療要素となります。うつ病に対するSSRI、双極性障害に対する気分安定薬、ADHDに対する刺激薬や非刺激薬などの適切な使用により、大麻使用の動機となっている精神症状の改善が期待できます。ただし、薬物間相互作用や依存リスクを考慮した慎重な薬物選択が必要です。

まとめ

大麻の使用は多様な健康被害をもたらし、依存症のリスクを伴う深刻な問題です。身体的影響から精神的影響、社会機能への障害まで、その影響は多岐にわたります。しかし、適切な治療と支援により回復は可能であり、早期の相談と治療開始が重要です。もし大麻使用でお悩みの方や、ご家族に使用者がいらっしゃる方は、まずは精神保健福祉センターや専門医療機関にご相談ください。一人で抱え込まず、専門家と共に回復への道筋を見つけていくことが大切です。

この記事の監修医師

注目記事