やめたくてもやめられない… 「大麻依存症」の重症度分類とは
公開日:2025/11/07

依存症を正確に診断するためには、科学的な基準に基づく専門的な評価が不可欠です。DSM-5に定義された診断基準や重症度分類をもとに、臨床でどのように大麻使用障害が判断されるのかをわかりやすく解説します。

監修医師:
公受 裕樹(医師)
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【経歴】
金沢大学医学部卒業
精神科単科病院を経て、現在都内クリニック勤務
精神保健指定医、産業医
【免許・資格】
精神保健指定医、産業医
金沢大学医学部卒業
精神科単科病院を経て、現在都内クリニック勤務
精神保健指定医、産業医
【免許・資格】
精神保健指定医、産業医
目次 -INDEX-
大麻依存症の診断と評価
依存症かどうかを判断するには、科学的な診断基準に基づいた評価が必要です。ここでは診断の流れと併存疾患の重要性を紹介します。診断基準と臨床症状
大麻依存症の診断は、DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)の「大麻使用障害」の診断基準に基づいて行われます。この基準では、12か月以内に特定の症状のうち2つ以上が認められる場合に診断されます。 具体的な症状には、耐性の形成、離脱症状の出現、意図した以上の使用、使用制限の試みの失敗、使用に関する活動への過度の時間消費、社会的・職業的活動の放棄、身体的・精神的問題の認識にもかかわらず使用継続、渇望の存在などがあります。 軽度(2-3症状)、中等度(4-5症状)、重度(6症状以上)の重症度分類により、治療計画の策定に役立てられます。臨床症状の評価においては、使用パターン(頻度、量、期間)、使用動機、社会機能への影響、身体的・精神的併存症の有無などを詳細に聴取することが重要です。併存疾患の評価と治療への影響
大麻依存症では、他の精神疾患との併存率が極めて高く、適切な診断と治療のためには包括的な精神医学的評価が必要です。頻繁に併存するのは他の物質使用障害で、アルコール使用障害との併存率は約30-50%、ニコチン依存との併存率は70%以上と報告されています。 気分障害の併存も高頻度で認められ、大うつ病性障害の併存率は約20-30%、双極性障害は約10-15%とされています。うつ症状が大麻使用の動機となることもあれば、長期使用によりうつ症状が増悪することもあり、因果関係の判定は困難な場合があります。 不安障害(パニック障害、社会不安障害、PTSD等)の併存率も高く、特にPTSDでは症状の自己治療目的での使用が多く認められます。これらの併存疾患は治療予後に大きく影響するため、個別化された治療アプローチが必要となります。まとめ
大麻の使用は多様な健康被害をもたらし、依存症のリスクを伴う深刻な問題です。身体的影響から精神的影響、社会機能への障害まで、その影響は多岐にわたります。しかし、適切な治療と支援により回復は可能であり、早期の相談と治療開始が重要です。もし大麻使用でお悩みの方や、ご家族に使用者がいらっしゃる方は、まずは精神保健福祉センターや専門医療機関にご相談ください。一人で抱え込まず、専門家と共に回復への道筋を見つけていくことが大切です。参考文献