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大人になっても治らない? 青少年期からの「大麻」使用が招く認知機能の持続的低下

 公開日:2025/11/06
大麻使用による精神的影響の長期症状

長期的な大麻使用は、脳の構造や機能に持続的な変化をもたらし、うつ病や統合失調症などのリスクを高めます。使用をやめても残る認知機能の障害や精神疾患の発症リスクについて、科学的根拠に基づいて詳しく解説します。

公受 裕樹

監修医師
公受 裕樹(医師)

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【経歴】
金沢大学医学部卒業
精神科単科病院を経て、現在都内クリニック勤務
精神保健指定医、産業医
【免許・資格】
精神保健指定医、産業医

大麻使用による精神的影響の長期症状

長期使用は脳の構造や機能に影響し、認知機能の低下や精神疾患の発症につながることがあります。その持続的影響を解説します。

認知機能の持続的障害

長期間の大麻使用は、認知機能に持続的で回復困難な影響を与える可能性があります。特に青少年期からの長期使用では、脳の発達過程にある神経回路に不可逆的な変化をもたらすリスクが高いとされています。 記憶機能の慢性的障害が顕著で、新しい情報の学習能力、長期記憶からの情報検索能力、エピソード記憶の形成能力などが広範囲に影響を受けます。注意・集中機能の持続的低下も重要な問題です。使用中止後数週間から数か月経過しても、注意の持続困難、気散じやすさ、集中力の低下が継続することがあります。 実行機能の慢性的障害により、計画性の欠如、衝動制御の困難、問題解決能力の低下が持続します。これは前頭前皮質の構造的・機能的変化に関連していると考えられ、MRI研究では前頭前皮質の灰白質体積の減少や、神経線維の完全性の低下が報告されています。

精神疾患発症リスクの増加

長期的な大麻使用は、さまざまな精神疾患の発症リスクを著しく増加させます。統合失調症の発症リスクは、非使用者と比較して2-3倍に増加し、特に青少年期からの使用開始では、リスクがさらに高まります。 気分障害、特にうつ病の発症リスクも有意に上昇します。長期使用者では、大うつ病エピソードの生涯有病率が非使用者の約2倍になると報告されています。これは、大麻使用による報酬系の機能不全や、セロトニン系への長期的影響によるものと考えられています。 不安障害の慢性化と重症化も重要な問題です。急性使用時の不安症状が慢性化し、パニック障害、社会不安障害、全般性不安障害などの不安障害が持続することがあります。また、使用中止時に生じる離脱不安が、不安障害の発症や増悪の契機となることもあります。

まとめ

大麻の使用は多様な健康被害をもたらし、依存症のリスクを伴う深刻な問題です。身体的影響から精神的影響、社会機能への障害まで、その影響は多岐にわたります。しかし、適切な治療と支援により回復は可能であり、早期の相談と治療開始が重要です。もし大麻使用でお悩みの方や、ご家族に使用者がいらっしゃる方は、まずは精神保健福祉センターや専門医療機関にご相談ください。一人で抱え込まず、専門家と共に回復への道筋を見つけていくことが大切です。

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