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「狭心症」の診断はどう行う? 心電図で見える“ST変化”とは【医師監修】

 公開日:2025/11/23
狭心症の診断

狭心症の診断においては心電図検査や運動負荷試験、さらに心臓カテーテル検査や画像診断など、さまざまな検査方法が用いられます。それぞれの検査の特徴や診断的価値、限界について詳しく解説します。適切な検査を組み合わせることで正確な診断が可能となり、最適な治療方針を決定することができます。

本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

狭心症の診断

狭心症の診断において心電図検査は基本的かつ重要な検査方法です。以下では、心電図検査の意義と具体的な所見について詳しく説明します。

安静時心電図の重要性と限界

安静時心電図は狭心症診断の第一歩として必ず実施される検査です。狭心症発作中に記録された心電図では、心筋虚血に特徴的なST変化(ST低下またはST上昇)が観察されます。ST低下は心内膜側の虚血を示し、労作性狭心症で多く見られます。一方、ST上昇は貫壁性の虚血を示し、異型狭心症や急性心筋梗塞で観察されます。

T波の変化も重要な所見で、陰性T波の出現や増高T波は心筋虚血を示唆します。また、不整脈の出現、特に期外収縮や心房細動などは心筋虚血に伴って生じることがあります。QRS幅の延長や新たな脚ブロックの出現も、重篤な心筋虚血の指標となります。

しかし、安静時心電図には重要な限界があります。発作時以外は正常所見を示すことが多く、安静時心電図が正常であっても狭心症を否定することはできません。実際に、労作性狭心症患者さんの約50%では安静時心電図が正常であるとされています。そのため、症状がある場合は運動負荷試験などの追加検査が必要になります。

運動負荷試験の診断的価値

運動負荷試験は狭心症診断において極めて重要な検査方法です。トレッドミルやエルゴメーターを用いて段階的に運動強度を上げながら心電図を記録し、運動による心筋虚血の誘発を評価します。運動により心筋酸素需要が増加し、冠動脈狭窄があると需要と供給のバランスが崩れ、心筋虚血が生じます。

診断基準として、運動負荷により水平型またはdown-sloping型のST低下が1mm以上認められることが重要です。up-sloping型のST低下は偽陽性の可能性が高いため、診断的価値は低いとされています。また、運動中の胸痛の出現、血圧反応の異常、運動耐容能の低下なども評価項目に含まれます。

運動負荷心電図は診断に有用だが感度は限定的で、発作時以外は正常となることがあるため他検査(画像検査や負荷画像検査)で補完する必要があります。偽陰性となる要因には、十分な運動強度に達しなかった場合、単枝病変で側副血行路が発達している場合、β遮断薬などの抗狭心症薬の服用などがあります。偽陽性の要因には、女性、左室肥大、ジギタリス服用、電解質異常などがあります。

心臓カテーテル検査と画像診断

狭心症の確定診断には侵襲的検査である心臓カテーテル検査が用いられます。また、非侵襲的画像診断の進歩により、より安全で詳細な評価が可能になっています。

冠動脈造影検査は狭心症診断のゴールドスタンダードとされる検査です。大腿動脈または橈骨動脈からカテーテルを挿入し、冠動脈の入り口にカテーテル先端を位置させて造影剤を注入し、冠動脈の形態と血流を評価します。複数の角度から撮影することで、冠動脈の狭窄部位、程度、性状を詳細に評価できます。

近年では冠動脈造影に加えて、血管内超音波(IVUS)や光干渉断層撮影(OCT)による血管内イメージングが行われることも多くなっています。これらの検査により、プラークの組成や血管壁の詳細な構造を評価することができ、より精密な診断と治療方針の決定が可能になります。

CT・MRI検査の診断における位置づけ

非侵襲的画像診断の進歩により、冠動脈CT検査(CCTA)が狭心症診断に広く用いられるようになりました。64列以上のマルチスライスCTを用いることで、冠動脈の詳細な画像を得ることができます。CCTAは冠動脈狭窄の検出に高い陰性的中率(95%以上)を有しており、狭心症の除外診断に優れています。

CCTAの利点は非侵襲的であること、外来で実施可能であること、冠動脈全体を一度に評価できることです。また、石灰化やプラークの性状についても情報を得ることができます。しかし、高度石灰化がある場合や不整脈がある場合は画質が低下し、正確な評価が困難になることがあります。

心臓MRI検査は心筋虚血の評価に有用です。薬物負荷心筋perfusion MRIにより、心筋血流の低下を定量的に評価することができます。また、心筋の動きや肥厚の評価により、慢性的な心筋虚血による心機能低下を検出することも可能です。造影剤を使用した遅延造影MRIでは、心筋梗塞や心筋線維化の範囲を正確に評価できます。

まとめ

狭心症は適切な診断と治療により症状の改善と予後の改善が期待できる疾患です。症状を見逃さず早期に医療機関を受診すること、危険因子の管理を継続すること、医師の指示に従って治療を続けることが重要です。胸の痛みや圧迫感などの心臓に関する症状でお困りの際は、循環器内科にご相談ください。

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