「狭心症」のリスクは遺伝でも高まる? 家族歴で1.7倍になる理由とは
公開日:2025/11/22

狭心症の発症には遺伝的要因や体質的特徴も大きく関与しています。家族歴がある場合のリスクや、日本人特有の体質的特徴について詳しく説明します。遺伝的素因があっても生活習慣の改善により発症リスクを軽減できることもお伝えします。ご自身の体質的特徴を理解することで、適切な予防対策を講じることが可能です。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
目次 -INDEX-
狭心症発症における遺伝的要因と体質
狭心症の発症には遺伝的要因も重要な役割を果たしており、家族歴や体質的特徴について理解することが重要です。家族歴の重要性
狭心症を含む冠動脈疾患には明確な遺伝的素因があることが知られています。両親や兄弟姉妹に冠動脈疾患の既往がある場合、発症リスクは1.4-1.7倍程度上昇するとされています。特に若年発症(男性55歳未満、女性65歳未満)の冠動脈疾患の家族歴がある場合は、リスクがさらに高まります。 遺伝的要因としては、脂質代謝に関与する遺伝子、血管内皮機能に影響する遺伝子、血液凝固系に関与する遺伝子などが挙げられます。これらの遺伝子変異により、LDLコレステロールの上昇、HDLコレステロールの低下、血管内皮機能障害、血栓形成傾向などが生じ、動脈硬化が促進されます。 近年の研究により、多数の遺伝子座が冠動脈疾患の発症に関与することが明らかになっており、これらの遺伝情報を統合した遺伝的リスクスコアの開発も進んでいます。ただし、遺伝的素因があっても生活習慣の改善により発症リスクを大幅に軽減できることも重要な知見です。体質的特徴と発症傾向
狭心症の発症には個人の体質的特徴も大きく影響します。日本人に特有の特徴として、欧米人と比較して異型狭心症(冠攣縮性狭心症)の頻度が高いことが知られています。これは血管平滑筋の攣縮に対する感受性や、自律神経系の特徴などが関与していると考えられています。 また、メタボリックシンドロームの構成要素である内臓脂肪蓄積、耐糖能異常、高血圧、脂質代謝異常が重複することにより、冠動脈疾患のリスクが相乗的に増加することが知られています。特に内臓脂肪から分泌される生理活性物質(アディポサイトカイン)の不均衡が、インスリン抵抗性や血管内皮機能障害を引き起こすことが明らかになっています。 喫煙への感受性にも個人差があり、同じ喫煙量でも冠動脈疾患の発症リスクに差が生じることがあります。これには薬物代謝酵素の遺伝子多型や、血管内皮細胞の酸化ストレスに対する抵抗性の違いなどが関与していると考えられています。参考文献