「狭心症」の発症は防げる? 生活習慣病を放置すると血管がどう変わるのか
公開日:2025/11/22

糖尿病や高血圧などの生活習慣病は、狭心症発症の重要な危険因子として知られています。これらの疾患が動脈硬化を促進し、冠動脈疾患のリスクを高める機序について詳しく解説します。生活習慣病の適切な管理が狭心症の予防と治療において重要な役割を果たすことをご理解いただけます。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
目次 -INDEX-
生活習慣病と狭心症の関連性
狭心症の発症には多くの生活習慣病が関与しており、これらの疾患の管理が狭心症の予防と治療において重要な役割を果たします。糖尿病と冠動脈疾患
糖尿病は狭心症発症の重要な危険因子の一つです。高血糖状態が続くと、血管内皮細胞の機能障害が起こり、動脈硬化が促進されます。糖尿病患者さんでは健常な方と比較して、冠動脈疾患の発症リスクが2-4倍高くなることが知られています。 糖尿病による血管障害の機序には、糖化終産物(AGEs)の蓄積、酸化ストレスの増加、炎症反応の亢進などがあります。これらの因子により血管内皮の一酸化窒素産生が低下し、血管拡張能が障害されます。また、血小板機能亢進により血栓形成傾向が高まることも知られています。 特に重要な点として、糖尿病患者さんでは神経障害により痛みを感じにくくなることがあり、無症候性心筋虚血や無痛性心筋梗塞のリスクが高まります。そのため、定期的な心電図検査や運動負荷試験による評価が必要です。高血圧と動脈硬化の進行
高血圧は動脈硬化進行の主要な危険因子であり、狭心症発症に大きく関与します。持続的な高血圧により血管壁には機械的ストレスが加わり、血管内皮の損傷と機能障害が起こります。これにより動脈硬化プラークの形成と進行が促進されます。 高血圧による血管変化には、血管壁の肥厚、弾性線維の断裂、平滑筋細胞の増殖などがあります。また、高血圧は左心室への負荷を増加させ、左室肥大を引き起こします。肥大した心筋では酸素需要が増加するため、同程度の冠動脈狭窄でもより容易に心筋虚血が生じるようになります。 収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上の状態が続くと、冠動脈疾患のリスクが有意に上昇します。特に収縮期血圧の上昇は独立した危険因子として重要で、適切な降圧治療により冠動脈イベントの発症を大幅に減少させることができます。参考文献