「アルツハイマー型認知症の初期症状」はご存知ですか?【医師監修】

初期症状を早期に発見することは、適切な治療開始と生活の質の維持につながります。正常な加齢による物忘れとの違いや、判断力・実行機能の変化を見逃さないことが重要です。記憶障害の特徴的なパターンや、日常生活における小さな変化に注目することで、早期発見の可能性が高まります。

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
アルツハイマー型認知症の初期症状の見極め
初期症状を正しく理解し、早期に気づくことは、適切な治療開始と生活の質の維持に重要です。
記憶に関する初期症状の特徴
アルツハイマー型認知症の初期症状として注目すべきは記憶の変化です。正常な加齢による物忘れでは、出来事の一部を忘れることが多く、ヒントがあれば思い出すことができます。
一方、アルツハイマー型認知症による記憶障害では、出来事そのものを忘れてしまいます。昨日の夕食を食べたこと自体を忘れ、「昨日は何も食べていない」と言うことがあります。また、ヒントを与えても思い出すことができないという特徴があります。
特に注意すべきは、新しい情報を記憶する能力の低下です。数分前に聞いた話を忘れたり、同じ質問を短時間で繰り返したりします。また、いつも置いている場所とは違う場所に物を置いて、それを探せなくなることも増えます。
記憶の障害は時間的勾配を持って現れることも特徴的です。最近の出来事から忘れ始め、古い記憶は比較的保たれる傾向があります。そのため、昔の話は詳細に覚えているのに、今朝の出来事は全く覚えていないということが起こります。
判断力と実行機能の変化
記憶障害と並んで早期に現れるのが、判断力や実行機能の低下です。これらの症状は日常生活の中で徐々に現れ、初めは単なる「うっかり」として見過ごされることが多いのです。
料理における変化は比較的わかりやすい指標です。これまで得意だった料理の手順がわからない、調味料の分量を間違える、複数の料理を同時に作ることができない、火の管理ができなくなり鍋を火にかけたまま忘れてしまうこともあります。
金銭管理の困難も初期によく見られる症状です。おつりの計算ができなくなったり、ATMの操作がわからなくなったりします。また、同じ商品を何度も購入したり、必要のないものを大量に買ったりすることもあります。
薬の管理も困難になり、飲み忘れが増えたり、同じ薬を重複して服用したりすることがあります。薬の種類や服用時間がわからなくなることも多く、健康管理に大きな影響を与える可能性があります。
まとめ
アルツハイマー型認知症は、患者さんとご家族の人生に大きな影響を与える疾患です。しかし、適切な理解と支援により、尊厳を保ちながら、その人らしい生活を続けることが可能です。早期発見・早期対応により症状の進行を遅らせ、質の高いケアにより生活の質を維持することで、患者さんとご家族がより良い時間を過ごせるよう支援していくことが重要です。医療従事者、家族、地域が連携し、包括的な支援体制を構築し、社会全体でサポートしていく必要があります。
参考文献