インスタントラーメンにおける健康課題の一つが、過剰な塩分含有量です。1食で1日分の塩分摂取目標量の大半を占めてしまう製品も少なくありません。塩分の摂り過ぎは、複数の慢性疾患のリスクを高めることが知られています。ここでは、高血圧と循環器疾患のリスク上昇、腎臓への負担とむくみの発生について解説します。塩分が身体に与える影響を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
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帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科卒業 横浜未来ヘルスケアシステム、戸塚共立第一病院3年7ヶ月勤務 株式会社コノヒカラ、障がい者グループホーム半年勤務 その後フリーランスを経て株式会社Wellness leadを設立。栄養士事業と健康事業を行なっている。
保有免許・資格
管理栄養士資格
インスタントラーメンの塩分過多がもたらす健康問題
インスタントラーメンにおける健康課題の一つが、過剰な塩分含有量です。塩分の摂り過ぎは、複数の慢性疾患のリスクを高めることが知られています。
高血圧と循環器疾患のリスク上昇
インスタントラーメン1食分には、塩分は多くの製品で1食あたり4〜6g程度ですが、近年は3g台に抑えた減塩タイプも市販されています。厚生労働省が定める成人の1日の食塩摂取目標量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満ですから、1食で1日分の大半を摂取してしまうことになります。
高塩分の食事を続けると、体内のナトリウム濃度が上昇します。身体はこれを薄めようと水分を保持するため、血液量が増加し、血管壁にかかる圧力が高まります。この状態が慢性化すると高血圧を発症する可能性があります。高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれるように、自覚症状がないまま進行し、心筋梗塞、脳卒中、心不全などの重篤な循環器疾患を引き起こすリスクを高めることが指摘されています。
特に注意が必要なのは、既に高血圧の傾向がある方や、家族歴に循環器疾患がある方です。このような方がインスタントラーメンを頻繁に食べると、血圧管理が困難になる場合があります。塩分摂取を控えることは、降圧薬と同等かそれ以上に重要な治療の一環とされています。
腎臓への負担とむくみの発生
過剰な塩分は腎臓にも大きな負担をかけます。腎臓は血液中の老廃物や余分な塩分を濾過して尿として排泄する器官ですが、塩分摂取が多いと、腎臓はそれを処理するためにより多くの仕事をしなければなりません。
長期間にわたって高塩分の食事を続けると、腎臓の濾過機能が低下し、慢性腎臓病(CKD)を発症するリスクが高まる可能性があります。腎機能が低下すると、さらに塩分の排泄能力が落ちるという悪循環に陥り、病態が進行していく場合があります。長期的には腎機能が低下すると透析が必要になる可能性もあります。
また、塩分過多は体内の水分バランスを乱し、むくみ(浮腫)を引き起こします。特に顔や手足にむくみが現れやすく、朝起きたときに顔がパンパンに腫れている、夕方になると靴がきつくなるといった症状が見られます。むくみは見た目の問題だけでなく、組織への酸素供給を妨げ、細胞機能を低下させる可能性もあります。
まとめ
インスタントラーメンは手軽で美味しい食品ですが、高カロリー、高脂質、高塩分という特性から、頻繁な摂取は体重増加や生活習慣病のリスクを高める可能性があります。栄養バランスの偏りも大きく、ビタミン、ミネラル、食物繊維、タンパク質が不足しがちです。
適切な知識を持ち、野菜やタンパク質を追加する、スープを残す、ノンフライ麺を選ぶなどの工夫を行うことで、健康への悪影響を抑えることができます。食べる頻度を週に1から2回程度に抑え、必ず副菜や追加の食材で栄養バランスを整えることが大切です。
体重管理や健康状態が気になる方は、食生活全体を見直し、必要に応じて医療機関や栄養士への相談をご検討ください。インスタントラーメンを完全に避ける必要はありませんが、食事全体のバランスを意識することで、健康的な食生活を維持することが可能です。