痛風と生活習慣病は、互いに影響し合いながら進行する関係にあります。肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症といった疾患は、インスリン抵抗性や慢性炎症を共通の背景に持ち、尿酸の産生を増やし排泄を低下させます。これらの疾患が複数併存すると、尿酸値の管理が一層困難になり、痛風発作のリスクも高まります。治療においては尿酸値だけでなく、血圧・血糖・脂質・腎機能を含めた総合的な管理が不可欠であり、併存疾患をまとめてコントロールすることが、発作予防と再発抑制の近道となります。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
痛風の原因と生活習慣病の関連
痛風は高尿酸血症を土台に、肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病と相互に悪化し合います。内臓脂肪の増加や慢性炎症、インスリン抵抗性により腎での尿酸再吸収が高まり、排泄が低下します。併存疾患をまとめて管理することが、発作予防と再発抑制の近道です。
尿酸を上げやすい薬剤
痛風や高尿酸血症の原因には、薬剤の影響も見過ごせません。特に利尿薬は、高血圧や心不全の治療で広く使用されていますが、尿酸の排泄を低下させる作用があります。利尿薬の中でもチアジド系利尿薬やループ利尿薬は、尿酸値を上昇させやすいため、痛風の既往がある方や尿酸値が高い方には慎重に使用されます。
低用量アスピリンも、血栓予防のために長期間服用されることがありますが、尿酸の排泄を抑制する作用があります。抗結核薬のピラジナミドや、免疫抑制薬のシクロスポリンなども、尿酸値を上昇させることが知られています。こうした薬剤を服用している方は、定期的に尿酸値を測定し、必要に応じて尿酸降下薬の併用や、薬剤の変更を検討することが求められます。
薬剤による尿酸値の上昇は、薬の必要性と尿酸管理のバランスを考慮しながら対応する必要があります。自己判断で薬を中止することは避け、必ず主治医に相談し、総合的な治療計画を立てることが大切です。
脱水と尿酸値の急激な変動
脱水や大量発汗、サウナ・激しい運動、飲酒は血液の濃縮と尿量低下を招き、尿酸値が急に変動して発作の引き金になります。
日常的な水分補給を習慣化し、飲酒時は合間に水やお茶を摂って脱水を防ぎましょう。
まとめ
痛風は、適切な知識と治療により十分にコントロール可能な疾患です。尿酸値が高いと指摘された方や、痛風発作を経験した方は、早期に専門医を受診し、総合的な評価を受けることが推奨されます。生活習慣の見直しと薬物療法を組み合わせることで、痛風発作の再発を防ぎ、関節や腎臓の健康を長期にわたって守ることができます。痛みや不安を抱えたまま過ごすのではなく、専門家の支援を受けながら、前向きに治療に取り組むことが大切です。健康診断の結果を軽視せず、早めの相談と継続的な管理を心がけることで、質の高い生活を維持できます。