「くも膜下出血の痛みの特徴」をご存じですか? 知っておきたいサインを医師に聞く

くも膜下出血に伴う激しい痛みは、なぜ生じるのでしょうか。髄膜への刺激、頭蓋内圧の急激な上昇、そして数日後に起こる血管攣縮など、複数の要因が関与しています。ここでは痛みが発生する生理学的な背景と、それぞれのメカニズムについて詳しく解説します.

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
くも膜下出血における痛みの性質と程度
患者さんが感じる痛みの特徴を詳しく知ることで、早期発見の手がかりが得られます。痛みの表現や性質には特徴的なパターンがあります。
突然発症する激烈な痛みの特徴
くも膜下出血の痛みは、しばしば「人生で経験したことのない激しい頭痛」と表現されます。突然に発症し、数秒から数分で強度が高まる点が特徴的です。患者さんは「後頭部をハンマーで殴られたような衝撃」「頭が割れるような痛み」「爆発するような感覚」といった言葉で表現することが多く、日常的な頭痛とは明らかに異なる強烈な痛みです。
くも膜下出血の頭痛は後頭部を中心に感じられることが多いですが、出血の場所や広がり方によって痛みの分布は異なります。前交通動脈瘤の破裂では前頭部や眼の奥に強い痛みを感じることがあり、中大脳動脈瘤では側頭部の痛みが目立つこともあります。椎骨脳底動脈系の出血では後頭部から頸部にかけての痛みが強く、首を動かすと痛みが増強することがあります。
血液がくも膜下腔全体に広がると頭全体が痛むようになり、特定の部位に限局しない全体的な圧迫感や重圧感として感じられることもあります。痛みは頭部だけでなく、首から肩、背中にかけて放散することもあり、これは髄膜刺激が脊髄を覆うくも膜にまで及んでいることを示唆します。
痛みに伴う随伴症状の多様性
くも膜下出血では頭痛以外にもさまざまな症状が同時に現れることがあります。吐き気や嘔吐は頭蓋内圧の上昇によって引き起こされ、頭痛とほぼ同時に出現することが多い症状です。嘔吐は反復性で、食事とは関係なく突然起こります。意識レベルの低下も重要な随伴症状で、軽度の意識混濁から昏睡状態まで程度はさまざまです。
出血量が多いほど意識障害は重くなり、会話が困難になったり、呼びかけに反応しなくなったりすることがあります。けいれん発作を起こすこともあり、全身性のけいれんが数分間続くこともあります。また、光を眩しく感じたり、首を前に曲げにくい項部硬直といった髄膜刺激症状も特徴的です。これらの症状が組み合わさって現れることで、くも膜下出血の可能性が高まります。
まとめ
くも膜下出血は突然発症する重篤な疾患であり、激しい頭痛、めまい、意識障害といった症状が特徴的です。痛みの性質や発症様式、随伴症状を正しく理解することで、早期発見と迅速な治療開始が可能になります。警告頭痛やいつもと異なる頭痛、めまいを伴う強い頭痛を経験した際には、躊躇せず脳神経外科や神経内科を受診し、専門の医師の診察と画像検査を受けることが大切です。