「くも膜下出血の出血源」はどこ? 脳動脈瘤ができやすい“危険な場所”とは【医師監修】

出血を引き起こす病変がどこに存在し、どのような特徴を持つのかを知ることは、病態を深く理解する手がかりとなります。脳動脈瘤ができやすい血管の分岐部や、外傷による出血の広がり方、生まれつきの血管異常など、さまざまな原因による出血部位の違いを詳しくご説明します。

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
くも膜下出血の出血源となる病変の位置
出血の原因となる病変がどこに存在し、どのような構造をしているかを知ることは、病態の理解に役立ちます。
脳動脈瘤の形成部位と血管分岐の関係
脳動脈瘤は血管の分岐部や曲がり角に形成されやすい特徴があります。血液が流れる際に血管壁にかかる圧力は一様ではなく、分岐部では血流がぶつかり合うため特に強い負荷がかかります。長年にわたってこうした力学的ストレスが加わると、血管壁の一部が徐々に膨らんで瘤状の突起ができると考えられています。
動脈瘤の大きさは数mmから数cmまでさまざまですが、小さな動脈瘤でも破裂のリスクはゼロではありません。動脈瘤が存在する場所によって破裂時の出血パターンも異なり、前方循環系(内頸動脈系)の動脈瘤では前頭部や側頭部への出血が多く、後方循環系(椎骨脳底動脈系)では後頭部や脳幹周囲への出血が目立つことがあります。
くも膜下出血は動脈瘤破裂以外にも、頭部外傷によって生じることがあります。交通事故や転倒などで頭部に強い衝撃が加わると、脳表面を走る小さな血管が切れてくも膜下腔に出血します。外傷性のくも膜下出血では、衝撃を受けた部位の直下だけでなく、脳が頭蓋内で揺さぶられることによって対側や広範囲に出血が広がることもあります。
外傷の場合には脳挫傷や硬膜下血腫など別の頭蓋内病変を合併することが多く、出血の分布パターンは動脈瘤破裂によるものとは異なります。外傷性出血では脳の表面に散在性に血液が付着する所見が特徴的で、画像検査で出血の位置や範囲を詳しく評価することが治療方針の決定に重要となります。
動静脈奇形やもやもや病などの血管異常
脳動脈瘤以外にも、生まれつきの血管異常がくも膜下出血の原因となることがあります。脳動静脈奇形は動脈と静脈が毛細血管を介さずに直接つながっている状態で、異常な血管の集まりが破裂すると脳内出血とともにくも膜下腔にも血液が漏れ出すことがあります。
もやもや病は脳の主幹動脈が徐々に細くなり、代わりに細かい異常血管網が発達する疾患で、これらの脆弱な血管が破れることで出血を起こす可能性があります。こうした血管異常は若年者のくも膜下出血の原因として注目されており、家族歴や既往歴の問診が診断の手がかりになります。いずれの場合も出血の位置は異常血管が存在する部位に依存し、動脈瘤破裂とは異なる分布を示すことがあります。
まとめ
くも膜下出血は突然発症する重篤な疾患であり、激しい頭痛、めまい、意識障害といった症状が特徴的です。痛みの性質や発症様式、随伴症状を正しく理解することで、早期発見と迅速な治療開始が可能になります。警告頭痛やいつもと異なる頭痛、めまいを伴う強い頭痛を経験した際には、躊躇せず脳神経外科や神経内科を受診し、専門の医師の診察と画像検査を受けることが大切です。