“頭痛”と“めまい”が同時にくる…それ「くも膜下出血」かも? 鑑別のポイントを医師が解説

医療現場では、めまいの性質や随伴症状を詳しく評価し、画像検査や神経学的診察を組み合わせて診断を進めます。問診から画像検査、眼球運動の観察まで、総合的な評価方法について解説します。正確な診断が適切な治療につながる重要性を理解しましょう。

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
くも膜下出血に関連するめまいの臨床的評価
医療現場でのめまいの評価方法と診断プロセスについて理解を深めます。総合的な評価が正確な診断につながります。
問診と症状の詳細な聴取
医師はめまいの性質、持続時間、誘因、随伴症状を詳しく聞き取ります。めまいが回転性か浮動性か、どのような状況で悪化するか、頭痛や吐き気を伴うかといった情報は診断の手がかりとなります。くも膜下出血では突然発症した激しい頭痛とほぼ同時にめまいが生じることが多く、時間経過の確認が重要です。
また、既往歴として高血圧、糖尿病、脂質異常症といった動脈硬化のリスク因子があるか、喫煙歴や家族歴があるかも問診で確認されます。未破裂動脈瘤を指摘されたことがある方や、以前に似たような頭痛を経験したことがある方は、その情報を医師に伝えることが診断の助けになります。
画像検査による確定診断の重要性
めまいと頭痛を伴う患者さんには、速やかに頭部CT検査やMRI検査が実施されます。CT検査はくも膜下出血の初期診断に有用で、くも膜下腔に高吸収域(白く写る部分)として血液が描出されます。特に発症直後はCTでの検出率が高く、迅速な診断が可能です。
MRI検査はより詳細な画像情報が得られ、出血の範囲や脳浮腫の程度、血管の状態を評価できます。画像検査でくも膜下出血が確認されれば、速やかに治療が開始されます。めまいを伴う頭痛は多様な原因によって生じるため、画像検査による客観的な評価が診断の確実性を高め、適切な治療につながります。
神経学的診察と眼球運動の観察
めまいの原因が中枢性(脳の障害)か末梢性(内耳の障害)かを判断するために、神経学的診察が行われることがあります。眼球運動の観察では眼振(眼球が無意識に揺れ動く現象)の有無や方向、性質を確認します。中枢性めまいでは方向交代性の眼振や垂直性の眼振が見られることがあり、末梢性めまいとは異なるパターンを示します。
また、指鼻試験や踵膝試験といった協調運動の検査、歩行テストなどで小脳や脳幹の機能を評価します。四肢の筋力や感覚、腱反射の異常がないかも確認され、神経学的所見の組み合わせから病変の部位を推定します。くも膜下出血では片麻痺や失語症といった局所症状を伴うこともあり、総合的な評価が必要です。
まとめ
くも膜下出血は突然発症する重篤な疾患であり、激しい頭痛、めまい、意識障害といった症状が特徴的です。痛みの性質や発症様式、随伴症状を正しく理解することで、早期発見と迅速な治療開始が可能になります。警告頭痛やいつもと異なる頭痛、めまいを伴う強い頭痛を経験した際には、躊躇せず脳神経外科や神経内科を受診し、専門の医師の診察と画像検査を受けることが大切です。