何を多く含む食品が「橋本病」発症のリスクを高める?【医師監修】

橋本病の発症や症状の悪化には、日常生活におけるさまざまな環境因子が影響します。ヨウ素の過剰摂取やストレス、感染症などが免疫系に作用し、病状に変化をもたらす可能性があります。これらの環境因子を適切にコントロールすることで、症状の安定化に役立てることができるでしょう。

監修医師:
濵﨑 秀崇(医師)
目次 -INDEX-
生活習慣と環境因子の役割
橋本病の発症や症状の悪化には、日常生活における様々な要因が影響を与えます。ヨウ素摂取量やストレスといった環境因子を理解し、適切に対処することで、症状のコントロールに役立てることができます。
ヨウ素摂取と甲状腺への影響
ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料となる重要なミネラルですが、過剰摂取は橋本病の発症や悪化のリスクを高める可能性があります。日本は海藻類を多く食べる食文化があり、世界的に見てもヨウ素摂取量が多い地域です。
昆布だしを頻繁に使用する、海藻サラダやひじきの煮物を日常的に食べる、昆布の佃煮をおやつ代わりにするといった食習慣がある方は、ヨウ素の過剰摂取になっている可能性があります。特に昆布はほかの海藻類と比較してヨウ素含有量が桁違いに多いため注意が必要です。
ヨウ素を過剰に摂取すると、甲状腺でのホルモン合成が一時的に抑制される現象(ウォルフ・チャイコフ効果)が起こります。橋本病では甲状腺がすでに障害を受けているため、この抑制が解除されにくく、甲状腺機能低下が持続してしまうことがあります。
ヨウ素含有のうがい薬や消毒薬、造影剤なども影響を与えることがあります。医療機関を受診する際には、橋本病であることを医療従事者に伝えることが重要です。
ストレスと感染症の影響
心理的・身体的ストレスは、免疫系に影響を与え、自己免疫疾患の発症や悪化に関与する可能性があります。強いストレス状態では、コルチゾールなどのストレスホルモンが分泌され、免疫バランスが崩れることが知られています。
仕事や家庭での大きな変化、対人関係の悩み、介護や育児の負担などが長期間続くと、心身の疲労が蓄積します。この状態が続くことで、免疫系の異常が生じやすくなる可能性があります。橋本病の発症前に、大きなライフイベントやストレスフルな状況があったという報告も見られます。
ウイルスや細菌による感染症も、免疫系を刺激して自己免疫反応を誘発する可能性があります。特に甲状腺に親和性のあるウイルスが感染することで、甲状腺組織の破壊とともに免疫系が活性化され、自己抗体の産生につながることがあると考えられています。
まとめ
橋本病は適切な診断と治療により、日常生活への支障を最小限に抑えることができます。疲労感やむくみといった症状が続く場合や、家族に甲状腺疾患の方がいる場合には、甲状腺機能の検査を受けることが推奨されます。早期発見と継続的な治療により、良好な生活の質を維持できる疾患です。気になる症状がある方は、内科や内分泌内科を受診されることをおすすめします。
参考文献
- 日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン」
- 日本内分泌学会「橋本病(慢性甲状腺炎)
- Familial risks between Graves disease and Hashimoto thyroiditis and other autoimmune diseases in the population of Sweden
- Minerals: An Untapped Remedy for Autoimmune Hypothyroidism?
- Cancer Risk in Hashimoto’s Thyroiditis: a Systematic Review and Meta-Analysis