女性の方が「橋本病」の罹患率が高い原因はご存知ですか?【医師監修】

橋本病の発症には、性別や年齢、家族歴といった複数の要因が関与しています。特に女性に多く発症し、遺伝的素因も関係することが知られています。発症リスクを高める要因を理解することで、注意すべき方や定期的な検査が推奨される方を明確にし、早期発見につなげることができます。

監修医師:
濵﨑 秀崇(医師)
目次 -INDEX-
橋本病を引き起こす要因
橋本病の発症には複数の要因が複雑に絡み合っています。特定の方がなぜ発症するのかを完全に予測することは困難ですが、リスク要因を知ることは予防や早期発見に役立ちます。
性別と年齢の影響
橋本病は圧倒的に女性に多く発症し、男女比は約1対10以上という報告もあります。この性差は自己免疫疾患全般に共通する特徴ですが、橋本病では特に顕著です。女性で発症が多い理由として、女性ホルモンが免疫応答の調節に関与することや、X染色体に免疫機能に関連する遺伝子が多く存在することなどが指摘されています。また、思春期・妊娠・産後・更年期といったホルモン環境の変化が免疫バランスに影響を与え、発症や悪化の契機になり得ることも報告されています。
発症年齢は幅広く、10代〜80代まであらゆる年齢層で見られますが、発症が多いのは30代〜50代の女性です。この年齢層は妊娠・出産や更年期といったホルモン環境の変化が起こりやすい時期であり、これらの変化が発症の引き金になる可能性があります。
男性でも発症することはありますが、女性に比べると頻度は低くなります。男性の場合、発症年齢が比較的高い傾向があり、症状が軽度であることも多いといわれています。ただし、診断が遅れる傾向もあるため注意が必要です。
家族歴と遺伝的リスク
家族内に甲状腺疾患の方がいる場合、橋本病の発症リスクが高まります。特に母親や姉妹が橋本病やバセドウ病などの自己免疫性甲状腺疾患を持っている場合、発症リスクは一般集団の数倍に上昇するといわれています。
遺伝的素因は単一の遺伝子ではなく、複数の遺伝子が関与する多因子遺伝であると考えられています。そのため、家族歴があっても必ずしも発症するわけではなく、逆に家族歴がなくても発症することがあります。
家族歴がある方は、定期的に甲状腺機能の検査を受けることが推奨されます。特に疲労感やむくみなどの症状が現れた場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。早期発見により、適切な時期に治療を開始できるでしょう。
まとめ
橋本病は適切な診断と治療により、日常生活への支障を最小限に抑えることができます。疲労感やむくみといった症状が続く場合や、家族に甲状腺疾患の方がいる場合には、甲状腺機能の検査を受けることが推奨されます。早期発見と継続的な治療により、良好な生活の質を維持できる疾患です。気になる症状がある方は、内科や内分泌内科を受診されることをおすすめします。
参考文献
- 日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン」
- 日本内分泌学会「橋本病(慢性甲状腺炎)
- Familial risks between Graves disease and Hashimoto thyroiditis and other autoimmune diseases in the population of Sweden
- Minerals: An Untapped Remedy for Autoimmune Hypothyroidism?
- Cancer Risk in Hashimoto’s Thyroiditis: a Systematic Review and Meta-Analysis