目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 配信コンテンツ
  3. 「パーキンソン病」の患者が注意すべき合併症とは? 寿命を左右する要因を医師が解説

「パーキンソン病」の患者が注意すべき合併症とは? 寿命を左右する要因を医師が解説

 公開日:2025/11/30
パーキンソン病が寿命に与える影響

パーキンソン病と診断された患者さんやご家族にとって、病気が寿命にどのような影響を及ぼすのかは重要な関心事です。適切な治療を受けることで、多くの患者さんは健常者とほぼ変わらない寿命を維持できることが分かっています。ただし、合併症の予防と管理が大切です。本項では、生存期間への影響や注意すべき合併症について、現在の医療水準における知見をお伝えします。

田頭 秀悟

監修医師
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

プロフィールをもっと見る
鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

パーキンソン病が寿命に与える影響

パーキンソン病の患者さんとその家族にとって、病気が寿命にどのような影響を与えるかは重要な問題です。

生存期間への影響

現在の医療水準では、パーキンソン病そのものが直接的な死因となることは少なくなっています。多くの研究により、適切な治療を受けている患者さんの平均寿命は、健常者と比較してわずかに短縮する程度であることが示されています。 ただし、診断時の年齢が高い場合や、認知機能低下を伴う場合は、生存期間への影響が大きくなる傾向があります。特に、75歳以上で診断された患者さんや、早期から認知症症状が現れる方では、生存期間が短縮するリスクが高くなります。 治療への反応性も重要な予後因子です。L-ドパなどの薬物治療に良好な反応を示す患者さんは、予後が良い傾向があります。逆に、薬物治療への反応が乏しい場合や、早期から運動合併症が現れる場合は、より注意深い経過観察が必要です。 非運動症状の程度も生存期間に影響します。特に、嚥下障害、起立性低血圧、認知機能低下などは、生命予後に直接関係する可能性があるため、これらの症状の早期発見と適切な管理が重要です。

死因と合併症

パーキンソン病患者さんの死因として多いのは、肺炎です。これは、嚥下機能の低下により食物や唾液が気道に誤って入る誤嚥性肺炎が主な原因です。嚥下障害は病気の進行とともに現れやすくなり、特に病気の後期において重要な問題となります。 転倒による外傷にも注意が必要です。バランス障害や筋強剛により転倒しやすくなり、骨折、特に大腿骨頸部骨折を起こすリスクが高まります。 心血管疾患も注意が必要で、パーキンソン病では自律神経機能の障害により、血圧調節異常や不整脈のリスクが高まることがあります。また、長期間の治療により使用する薬剤の中には、心血管系に影響を与えるものもあります。 認知症の合併は生存期間に大きな影響を与えます。パーキンソン病に認知症を合併した場合は、日常生活の自立度が著しく低下し、介護負担も増大します。これにより、間接的に生存期間が短縮するリスクが高まります。 近年では、これらの合併症に対する予防的アプローチが重要視されています。定期的な嚥下機能評価や転倒予防対策、心血管リスクの管理、認知機能の維持などに積極的に取り組むことで、長期的な予後の改善が期待できます。

まとめ

パーキンソン病は複雑で多面的な疾患ですが、正しい知識と適切な医療サポートがあれば、病気と上手に付き合いながら質の高い生活を長期間維持することが可能です。症状の早期発見、適切な診断と治療、継続的なケアが重要であり、患者さんとその家族が希望を持って歩んでいけるよう、医療従事者をはじめとする多くの支援者が連携してサポートしています。

この記事の監修医師

注目記事