パーキンソン病の進行速度や症状の現れ方は、患者さんによって大きく異なります。若年で発症した方では進行が緩やかな傾向がある一方、高齢発症では進行が早い場合があり、また症状のタイプによっても予後が変わってきます。このセクションでは、進行パターンの多様性と、症状の組み合わせによる分類について、それぞれの特徴とともに詳しく解説していきます。
監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
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鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。
パーキンソン病の進行パターンと個人差
パーキンソン病の進行は患者さんによって大きく異なり、一律ではありません。進行速度や現れる症状の組み合わせには顕著な個人差があります。
進行速度の違い
一般的に、パーキンソン病の進行は緩やかとされていますが、個人差が大きいのが特徴です。症状が現れてからHoehn-Yahrステージ3に達するまでの期間は、平均で約5〜10年とされていますが、2〜3年で進行する方もいれば、15年以上かけて緩やかに進行する方もいます。
若年発症の患者さんでは、一般的に進行が緩やかな傾向があります。これは、若い脳の神経可塑性(適応能力)が高いことや、代償機構がより効果的に働くことが関係していると考えられています。一方で、高齢発症の場合は進行が早い傾向にあります。
初発症状の種類も進行予測の手がかりとなります。震えが主体で始まった方は進行が緩やかで、筋強剛や動作緩慢が主体の方は進行が早い傾向があります。また、姿勢反射障害が早期から現れる場合は、進行が早い可能性が高いとされています。
症状パターンによる分類
パーキンソン病は主要症状の組み合わせにより、いくつかのサブタイプに分類されることがあります。一般的なのは「振戦優位型」「非振戦優位型(動作緩慢・筋強剛優位型)」「混合型」の3つです。
振戦優位型は、静止時振戦が主体となるタイプで、予後が良いとされています。進行は緩やかで、認知機能の低下も遅い傾向があります。患者さんの約30〜40%がこのタイプに該当します。
非振戦優位型は、筋強剛や動作緩慢が主体となるタイプで、震えは軽度または認められません。姿勢反射障害が早期から現れやすく、歩行障害も目立ちます。進行は早く、認知機能の低下やバランス障害が現れやすい傾向があります。
混合型は、震えと筋強剛・動作緩慢の両方が明確に認められるタイプで、一般的なパターンです。症状の組み合わせや進行パターンは個人差が大きく、予測が困難な場合があります。
近年では、非運動症状の特徴による分類も注目されています。認知機能低下が早期から目立つ「認知症型」、自律神経症状が顕著な「自律神経型」、精神症状が主体となる「精神症状型」などがあり、これらは治療方針や予後に大きく影響します。
まとめ
パーキンソン病は複雑で多面的な疾患ですが、正しい知識と適切な医療サポートがあれば、病気と上手に付き合いながら質の高い生活を長期間維持することが可能です。症状の早期発見、適切な診断と治療、継続的なケアが重要であり、患者さんとその家族が希望を持って歩んでいけるよう、医療従事者をはじめとする多くの支援者が連携してサポートしています。