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「パーキンソン病になりやすい人のライフスタイル」を医師が解説 日々の食事に要因が?

 公開日:2025/11/25
パーキンソン病になりやすい方のライフスタイル要因

日々の生活習慣や職業環境は、パーキンソン病の発症リスクに少なからず影響を与えることが研究で示されています。農業や溶接などの特定の職業に従事する方では発症リスクが高まる傾向があり、また食事内容も重要な要素となります。本項では、職業的な環境曝露や食生活といったライフスタイル要因が、どのように病気のリスクと関連しているのかを見ていきます。

田頭 秀悟

監修医師
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

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鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

パーキンソン病になりやすい方のライフスタイル要因

日常の生活習慣や環境要因は、パーキンソン病の発症リスクに大きな影響を与えることが、多くの疫学研究で明らかになっています。

職業と環境曝露

特定の職業に従事している方は、パーキンソン病の発症リスクが高いことが知られています。注目されているのは農業従事者で、農薬や除草剤への長期間の曝露により発症リスクが約1.5〜2倍高まるとされています。 溶接工や金属加工業者も高リスク群です。これらの職業では、マンガンや鉛、銅などの重金属粉塵を吸入する機会が多く、これらの物質が脳内に蓄積することで神経細胞にダメージを与える可能性があります。特にマンガン曝露では「マンガン中毒症」という、パーキンソン病に似た症状を呈する疾患が知られています。 化学工場や石油精製工場で働く方も注意が必要です。有機溶媒(トルエン、キシレン、ベンゼンなど)への曝露が、ドパミン神経細胞の変性を促進する可能性が指摘されています。

食事と栄養要因

食事内容もパーキンソン病のリスクに影響を与えます。抗酸化物質を豊富に含む食品の摂取は、神経保護的に働く可能性があります。ビタミンEやビタミンC、ベータカロテンなどの抗酸化ビタミンを多く含む野菜や果物の摂取は、発症リスクを低下させる可能性が示唆されています。 魚に含まれるオメガ3脂肪酸(DHA、EPA)も注目されており、定期的な魚の摂取は神経保護的に働く可能性があります。地中海食のような、魚、野菜、果物、オリーブオイルを多く含む食事パターンは、パーキンソン病のリスクを低下させるとする研究もあります。 一方で、乳製品の過剰摂取はリスクを高める可能性が指摘されています。これは、乳製品に含まれるカゼインタンパクがドパミンの吸収を阻害する可能性や、乳製品の生産過程で使用される農薬の残留などが関係している可能性があります。 鉄分の過剰摂取も注意が必要です。鉄は体内で酸化ストレスを促進し、特に脳内では神経細胞の障害を引き起こす可能性があります。サプリメントによる鉄分の過剰摂取は避け、バランスの取れた食事から適切な量を摂取することが重要です。

まとめ

パーキンソン病は複雑で多面的な疾患ですが、正しい知識と適切な医療サポートがあれば、病気と上手に付き合いながら質の高い生活を長期間維持することが可能です。症状の早期発見、適切な診断と治療、継続的なケアが重要であり、患者さんとその家族が希望を持って歩んでいけるよう、医療従事者をはじめとする多くの支援者が連携してサポートしています。

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