目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 配信コンテンツ
  3. 「パーキンソン病の発症リスクが高い人」とは? 遺伝子と生活環境の関係を医師が解説

「パーキンソン病の発症リスクが高い人」とは? 遺伝子と生活環境の関係を医師が解説

 公開日:2025/11/24
パーキンソン病の発症に関わる要因

パーキンソン病の発症には、遺伝的な素因と環境からの影響が複雑に絡み合っています。特定の遺伝子変異を持つ方では発症リスクが高まることが分かっており、また農薬や重金属などの環境要因も関与する可能性が指摘されています。ここでは、病気の発症に影響を与える遺伝的背景と環境因子について、現在明らかになっている知見を整理してお伝えします。

田頭 秀悟

監修医師
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

プロフィールをもっと見る
鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

パーキンソン病の発症に関わる要因

パーキンソン病の発症には、遺伝的要因と環境要因が複雑に関与していると考えられています。これらの要因の相互作用により、個人の発症リスクが決まると考えられています。

遺伝的要因の影響

パーキンソン病患者さんの約10〜15%は家族歴があるとされており、遺伝的要因の関与が示唆されています。 SNCA遺伝子は、αシヌクレインをコードする遺伝子です。この遺伝子の変異や重複により、αシヌクレインタンパク質の産生量が増加したり、構造が変化したりすることで、レビー小体の形成が促進されると考えられています。 LRRK2遺伝子の変異も、家族性パーキンソン病で重要な役割を果たします。この遺伝子は「パーキン遺伝子」とも呼ばれ、細胞内のタンパク質品質管理に関与しています。変異により、異常なタンパク質の蓄積が起こりやすくなると考えられています。 GBA遺伝子の変異も注目されており、この遺伝子の変異を持つ方は、パーキンソン病の発症リスクが高くなるとされています。GBA遺伝子は細胞内の老廃物処理に関わるライソゾーム機能に重要な役割を果たしており、その機能低下がαシヌクレインの蓄積を促進すると考えられています。 ただし、遺伝子変異があっても必ずしも発症するわけではなく、遺伝子が症状発現に関わる率を示す浸透率はその遺伝子により異なります。

環境要因と生活習慣

環境要因もパーキンソン病の発症に重要な影響を与えます。農薬や除草剤への曝露は、発症リスクを高める環境要因として注目されています。重金属への曝露との関連も議論されていますが、結論は分かれています。とくにマンガン曝露に関しては、「マンガニズム」と呼ばれるパーキンソン症候に類似した別疾患が知られており、特発性パーキンソン病とは病態や治療反応が異なる点が明確に区別されています。一方、銅や鉛などの一般的な金属については、神経変性への関与が報告されているものの、医学的には確定的な結論には至っていません。 また、カフェイン摂取は保護的要因として注目されており、コーヒーや茶を定期的に摂取する方は、パーキンソン病の発症リスクが低いとする報告があります。これは、カフェインのアデノシン受容体への作用や抗酸化作用が関係している可能性があります。

まとめ

パーキンソン病は複雑で多面的な疾患ですが、正しい知識と適切な医療サポートがあれば、病気と上手に付き合いながら質の高い生活を長期間維持することが可能です。症状の早期発見、適切な診断と治療、継続的なケアが重要であり、患者さんとその家族が希望を持って歩んでいけるよう、医療従事者をはじめとする多くの支援者が連携してサポートしています。

この記事の監修医師

注目記事