「パーキンソン病の根本原因」を医師が解説 ドパミン低下とレビー小体の正体とは

パーキンソン病が発症する背景には、脳内の特定の部位における神経細胞の変化があります。黒質と呼ばれる部位のドパミン神経細胞が徐々に減少し、運動機能の調節に必要なドパミンが不足することが根本的な原因です。さらに、異常なタンパク質の蓄積も病気の進行に深く関与しています。このセクションでは、病気を引き起こす脳内の変化について、そのメカニズムを詳しく紐解いていきます。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
パーキンソン病の根本的原因とメカニズム
パーキンソン病の発症メカニズムは複雑で、現在でも完全には解明されていません。しかし、脳内の特定の部位における神経細胞の変化が中心的な役割を果たしていることが明らかになっています。
ドパミン神経細胞の変性
パーキンソン病の根本的な原因は、脳幹部にある「黒質」と呼ばれる部位のドパミン神経細胞が徐々に減少することです。黒質は運動機能の調節に重要な役割を果たす部位で、ここから分泌されるドパミンという神経伝達物質が、滑らかで協調的な運動を可能にしています。
正常な状態では、黒質のドパミン神経細胞が「線条体」という部位にドパミンを供給しています。しかし、パーキンソン病では黒質の神経細胞が変性・脱落し、ドパミンの産生と放出が著しく減少します。
この神経細胞の減少は一様ではなく、黒質の特定の部位から始まり、徐々にほかの部位に広がっていきます。そのため、症状も段階的に進行し、はじめは軽微な変化から始まって、時間とともにより明確な症状として現れるようになります。
ドパミンの減少により、運動の開始、継続、調整が困難になります。これが、パーキンソン病の特徴的な運動症状である震え、筋肉のこわばり、動作の緩慢さ、バランス障害を引き起こす直接的な原因となっています。
αシヌクレインとレビー小体
近年の研究により、パーキンソン病の病理学的特徴として「レビー小体」と呼ばれる異常なタンパク質の蓄積が注目されています。レビー小体は、主に「αシヌクレイン」というタンパク質が異常に凝集したもので、神経細胞内に蓄積します。
正常な状態では、αシヌクレインは神経細胞の機能維持に重要な役割を果たしています。しかし、何らかの原因でこのタンパク質の構造が変化し、正常に分解されなくなると、細胞内に蓄積してレビー小体を形成します。これらの異常なタンパク質の蓄積が神経細胞の機能を障害し、最終的に細胞死を引き起こすと考えられています。
レビー小体の蓄積は黒質だけでなく、脳のほかの部位にも広がることが知られています。これが、パーキンソン病で運動症状以外にも認知機能の低下、自律神経症状、精神症状などの多彩な非運動症状が現れる理由と考えられています。
まとめ
パーキンソン病は複雑で多面的な疾患ですが、正しい知識と適切な医療サポートがあれば、病気と上手に付き合いながら質の高い生活を長期間維持することが可能です。症状の早期発見、適切な診断と治療、継続的なケアが重要であり、患者さんとその家族が希望を持って歩んでいけるよう、医療従事者をはじめとする多くの支援者が連携してサポートしています。