「閉塞隅角緑内障の人が飲める薬」はご存知ですか?【医師監修】
公開日:2025/12/04

緑内障の治療では眼圧を下げることが重要ですが、なかには眼圧を上げてしまうおそれのある薬があります。特に、閉塞隅角緑内障の方は、こうした薬によって急激に眼圧が上昇し、急性緑内障発作を起こすリスクがあります。本記事では、閉塞隅角緑内障の人が抗コリン薬の代わりに飲める薬などを解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「緑内障の人が飲んではいけない薬」はご存知ですか?飲んではいけない理由も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
栗原 大智(医師)
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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。
目次 -INDEX-
閉塞隅角緑内障の人が抗コリン薬の代わりに飲める薬
抗コリン薬が治療に用いられる病気の種類を教えてください
抗コリン薬は全身のさまざまな疾患の治療に使われています。代表的なものとしては、パーキンソン病や頻尿や過活動膀胱、気管支喘息などが挙げられます。ほかにも全身麻酔の前投薬や眼科での散瞳検査にも抗コリン薬が用いられています。このように抗コリン薬は多くの場面で使われています。
閉塞隅角緑内障の人が抗コリン薬での治療を要する病気になったときはどうするのですか?
まず主治医に相談し、代替薬や治療法がないか検討します。抗コリン薬以外にも治療の選択肢がある疾患では、なるべく隅角に影響しない薬を使うのが原則です。例えば、抗ヒスタミン薬の代わりに第二世代の抗アレルギー薬を用いる、頻尿の治療では抗コリン作用を持たないβ3刺激薬を選ぶ、といった工夫があります。どうしても抗コリン薬が必要な場合には、眼科でレーザー虹彩切開術や白内障手術を受けて隅角を開通させておけば、抗コリン薬による急性緑内障発作の危険がほぼなくなります。
また、過去に眼科の検査で散瞳を行って特に問題がなかった方であれば、抗コリン薬を使っても発作を起こす可能性は低いとされています。どうしても抗コリン薬が必要な病気にかかった場合は、自己判断で避けたりせず、眼科医や他科の医師と相談しながら安全性の高い治療法を選択してください。
風邪を引いたときに抗コリン薬の代わりにどのような市販薬を買えばよいのか教えてください
風邪の症状を抑える市販薬を購入する際は、抗コリン作用を含まないものを選ぶのが基本です。総合感冒薬の多くには抗ヒスタミン成分が入っているため避けた方がよいでしょう。咳がつらい場合は、抗ヒスタミンを含まない鎮咳去痰薬を選ぶようにします。鼻水や鼻づまりに対しても、抗コリン作用のある成分を避け、場合によっては医師に相談して点鼻薬や第二世代の内服薬で代替しましょう。市販薬を購入する際には薬剤師に緑内障であることを伝え、適切な商品を選んでもらうとよいでしょう。
編集部まとめ
緑内障患者さんが注意すべき薬は、主に抗コリン作用のある薬であり、その多くは閉塞隅角緑内障の場合に問題となる薬です。開放隅角緑内障の方であれば基本的に使用可能ですが、それでも新しい薬を飲む際には眼科医に相談するのが望ましいでしょう。緑内障は糖尿病や高血圧などと同じく一生付き合う病気ですが、医師の指導の下で薬物療法と生活習慣の工夫を続ければ、多くの場合その進行を抑えられます。心配しすぎず、しかし油断せずに正しい知識で緑内障と向き合っていきましょう。