「軽度知的障害」はどんな病気かご存知ですか?男女別の割合も解説!【医師監修】
公開日:2025/11/19

※この記事はMedical DOCにて『「女性が軽度知的障害」を発症するとどんな「特徴」が現れるかご存知ですか?【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
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島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。
軽度知的障害の基礎知識
軽度知的障害とはどのような状態ですか?
軽度知的障害とは、知的な発達が平均よりやや遅れており、標準化された知能検査(WAIS:成人知能検査、WISC:児童知能検査)で、IQ(知能指数)がおおむね50~70の範囲にある状態を指します。なお、一般的なIQの平均値は100前後とされています。
具体的には、抽象的な思考や複雑な判断が苦手なことが多く、学習に時間がかかる、日常生活の段取りがうまくできない、人とのやりとりに戸惑いを感じるなどといった困りごとが生じる場合があります。ただし、言葉を用いたコミュニケーションや、身の回りのことを自分自身でこなす力は備わっているため、外見上は障害があるとは気付かれにくいこともあります。
一方で、初めての作業や複雑な手続き、人との距離感をうまく取ることが難しいこともあり、生活や仕事の場面では、周囲の理解と環境の工夫が重要になります。
軽度知的障害の方の割合を男女別に教えてください
知的障害は、全体の有病率が1~3%程度とされており、そのなかでも軽度の障害が多くを占めると報告されています。男女比でみると、知的障害は男性にやや多くみられる傾向があります。これは国や診断基準、調査の方法によって異なりますが、一般的な傾向として広く受け入れられているものです。
この差には、生物学的な要因(X染色体に関連する遺伝的な特徴、男性脳の発達の脆弱性など)が関係している可能性があると指摘されています。また、女性の場合は周囲に合わせる力が高く、軽度知的障害の状態が気付かれにくいことから、統計上少なく出る傾向があるとも考えられています。
軽度知的障害かどうかを自分で確かめる方法はありますか?
参考になる方法はいくつかありますが、軽度知的障害かどうかを正確に判断するためには医療機関で知能検査(WAIS-IVやWISC-Vなど)を受けましょう。これらの検査では、IQの数値だけでなく、言語理解や記憶力、処理速度など、認知機能の得意・不得意を細かく評価できます。
インターネット上には自己診断ツールもありますが、医学的な根拠に乏しいものも多く存在するため、参考程度にとどめましょう。
編集部まとめ
軽度知的障害のある女性は、見た目や話し方だけでは気付かれにくいものの、日常生活や対人関係、仕事などでさまざまな困難を抱えていることがあります。時間管理や金銭のやりくり、抽象的な表現の理解などが難しく、誤解を招いたり孤立につながったりしてしまうこともあります。
こうした困難に対しては、具体的で丁寧な説明や視覚的なサポート、肯定的な声かけなどが有効です。また、失敗を責めるのではなく、できたことに注目して環境を整えることが、本人の自信や意欲につながります。
本人の特性を丁寧に理解し、温かく寄り添った関わりを意識することで、自立した暮らしを送るための支えになります。