「急性膵炎」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?【医師監修】
男女ともに比較的中高年に多くみられる急性膵炎は、年々増加傾向にあります。
「突然始まる激しい腹痛」が特徴で、重症化すると合併症を起こしてショック症状に陥ることもある病気です。
急性膵炎は、どのような原因で引き起こされ、どのような経過をたどるのでしょうか。
疑問をお持ちの方もいらっしゃると思いますので、今回は急性膵炎について詳しくご紹介します。
急性膵炎が発症する原因・症状を詳しくお話ししますので、ぜひ最後までお読みください。
※この記事はMedical DOCにて『「急性膵炎」を発症すると現れる初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
急性膵炎の症状
急性膵炎はどのような病気でしょうか?
消化酵素には、アミラーゼ(デンプン分解)・リパーゼ(脂肪分解)・トリプシン(タンパク質分解)があり、本来はその消化酵素が膵臓自体を消化しないように安全に機能しています。しかし、何らかの原因によって正常に機能しなくなると、膵臓の消化酵素は異常に活性化して膵臓そのものを消化(自己消化)してしまうのです。
その結果、膵臓に炎症が起き、腹痛・吐き気などのさまざまな症状が出現します。急性膵炎が起こった場合は、絶食して膵臓を休ませ、薬物療法で水分補充・炎症改善・消化酵素分泌抑制などを行います。重症化すると、炎症は膵臓だけにとどまらずに肺・腎臓・肝臓などへも影響を及ぼす場合があるため、早めに適切な治療を行うことが大切です。
日本における急性膵炎の発症は年々増加傾向にあります。女性より男性に多く、その比は約2倍です。発症年齢では女性70歳代・男性60歳代の方が多いことがわかっています。
急性膵炎の症状を教えてください。
食後に痛みが現れる場合もあり、胃痛だと自己判断してしまうケースもあるので注意しましょう。その他の症状としては、多い順に嘔吐・発熱・食欲低下・腹部の張り・全身のだるさなどがあります。状態が悪化すると、重症化して周囲の臓器へも炎症が進み、黄疸・意識障害・ショックなどを引き起こして、全身状態悪化の危険もありますので注意が必要です。これらの症状がある場合は、自己判断せずに早めに受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
発症の原因を教えてください。
次に多いのは胆石症です。胆管は胆汁、膵管は膵液をそれぞれ運びますが、十二指腸へと繋がる部分で合流する仕組みになっています。胆管にできた胆石がその合流部分に詰まると、膵液の流れも悪くなるので、急性膵炎を引き起こしてしまうのです。アルコール性急性膵炎は男性、胆石性急性膵炎は女性に多いことが分かっています。
その他の原因は、脂質異常症・薬剤性・外傷性・先天性などです。脂質異常症では、脂肪が膵臓に蓄積されて炎症を引き起こすとされています。薬剤性はある特定の薬物の長期使用が原因で、先天性は先天的な膵臓の形状異常が原因です。
また、原因が特定できない特発性もあります。急性膵炎の発症の原因を知り、早期発見・早期治療に繋げることが大切です。
どのような方が急性膵炎になりやすいのでしょうか?
次に胆石症を患っている方です。胆管と膵管が合流する十二指腸への出口に胆石が詰まってしまうと、消化酵素を含んだ膵液の流れが悪くなるため、急性膵炎を発症しやすくなります。また、脂質異常症を患っている方も注意が必要です。
その他には、特定の薬剤を長期間に渡って服用している方も急性膵炎になりやすいことがわかっています。特に多いのは、抗てんかん薬(バルプロ酸ナトリウム)です。次いで、抗HIV薬(ジダノシン)・炎症性腸疾患治療薬(メサラジン)なども報告されています。しかし、これら全ての方が発症するわけではありません。
当てはまる方は、改善できること・治療できることは行い、急性膵炎にならないよう注意しましょう。また、何らかの自覚症状が出た場合には、早めに医師の診察を受けるようにしてください。
編集部まとめ
急性膵炎について詳しくご紹介しました。
急性膵炎は、何らかの原因で膵臓が炎症を起こしてしまう病気です。その原因としては、アルコールの摂取・胆石症などが挙げられます。
突然現れる腹部の激痛が特徴的な症状で、他には吐き気・嘔吐・発熱などがあり、重症化すると意識障害・ショックなどが現れて命に影響を及ぼす危険があります。
早期に診断がついて、絶食・点滴などの治療が適切に行われれば、治癒が可能です。
自分自身で気をつけることができる病気なので、節度のある飲酒・バランスのとれた食事を心がけ、生活習慣を健康的に整えて急性膵炎を予防しましょう。
参考文献