生命維持に欠かせない臓器の1つである肝臓の機能が失われることを「肝不全」といいます。
肝不全は、ウイルス感染・自己免疫疾患・アルコール摂取などが原因で引き起こされることが多いです。
急激に進行すれば、命に関わる恐れもある病気ですので、定期的な健康診断を受けることも重要です。
今回は、肝不全の特徴・肝硬変との違いや症状・原因・治療・食事療法・末期症状・余命について詳しく解説していきます。
※この記事はMedical DOCにて『「肝不全」の初期症状・末期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。
肝不全の末期症状
肝不全は治りますか?
肝不全の原因を明らかにし、治療することで進行を防ぐことは可能です。先にもお伝えしましたが、ウイルスによる肝不全であれば抗ウイルス療法を行います。また、アルコールが原因で肝硬変となり肝不全の状態が引き起こされた場合には、禁酒する必要があるでしょう。しかし、慢性肝不全の状態でも感染症などによって、急性増悪が引き起こされる可能性も考えられます。急激に悪化すれば、命の危険に関わることもあるため注意が必要です。
肝不全の末期症状を教えてください。
末期になると、黄疸・腹水・食道静脈瘤・腹壁静脈怒張・浮腫・消化管出血・肝性昏睡など、全身に症状が現れるようになります。このような状況になってしまえば、肝移植を行う必要があるでしょう。急性増悪により多臓器不全のリスクが高まりますので、早急な治療が大切です。
肝不全と診断された場合の余命を教えてください。
肝硬変により肝移植の適用となった患者さんの移植後の生存率は、5年生存率が75%程度、10年生存率は66%程度です。移植が受けられれば、数年後も余命を維持できるでしょう。しかし、ドナーの不足により肝移植が受けられないケースもあります。また、慢性肝不全が何らかの原因によって急激に進行してしまう可能性もあるため注意が必要です。早期に適切な治療を受けることが大切です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれていることからも分かるように、病気による症状が分かりにくい臓器です。気付かないうちに肝硬変が進み、肝不全が引き起こされることもあります。黄疸や腹水など、自覚できる症状が現れてから受診するのでは、治療が遅れてしまうことも多いです。体調に変わりはないと感じる場合でも定期的な健康診断を受け、早期発見に努めることを心がけましょう。
編集部まとめ
今回は、肝臓の機能が低下し、黄疸や腹水といった症状が現れる「肝不全」について解説しました。
肝不全は、自覚症状が現れた頃には病気がかなり進行していることが多いです。また、原因も様々ですので、ご自身で発症初期に気付くことは困難といえるでしょう。
病気が進行してしまえば、肝性脳症や食道静脈瘤などの合併症が引き起こされることもあります。
急性肝不全は、風邪のような症状・倦怠感・食欲不振などから始まることもあります。
体調に少しでも違和感を覚えるようであれば、無理をせずに様子をみることが大切です。
また、定期的に検査を受け、健康を維持していくことも重要です。肝不全に限った話ではありませんが、日頃からバランスの良い食事や規則正しい生活を心がけるようにしましょう。