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「多嚢胞性卵巣症候群」を発症すると現れる症状はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/03/01
多嚢胞性卵巣症候群 原因や症状

多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovarian syndrome)は略してPCOSと呼ばれ、卵胞が育つのに時間がかかり、なかなか排卵しない疾患です。

月経不順・無月経・にきびが多い・毛深い・肥満などの自覚症状があれば、該当する可能性があります。

若い女性の排卵障害で多くみられます。不妊の原因にもなり、妊娠を希望しているかどうかで治療方針が変わってくる点も知っておきましょう。

また子宮体がんなどの病気リスクが高まるため、放置せずに改善しておくべき疾患です。

多嚢胞性卵巣症候群の症状・原因・診断方法などについて紹介します

※この記事はMedical DOCにて『「多嚢胞性卵巣症候群」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

多嚢胞性卵巣症候群の原因や症状

カルテを持つ医師

多嚢胞性卵巣症候群はどんな病気ですか?

通常の月経周期(25~38日間)では数十個の卵胞が育ち始め、その中の1個が十分に成長することで排卵が起こります。しかし多嚢胞性卵巣症候群は卵胞の成長が止まり、卵巣内にとどまってしまうのです。そのため排卵が起こりにくくなるのです。
症状として月経不順・無月経・不正出血が表れます。妊娠の可能性がある20代~45歳の女性の20~30人に1人が発症するといわれています。
「囊胞」とは見慣れない難しい用語ですが「のうほう」と読み、分泌物が袋状にたまった病態のことです。超音波でみると1cm未満の大きさのたくさんの卵胞、つまり嚢胞が卵巣の外側に並んでいる様子が認められ、ネックレスサインと呼ばれます。

多嚢胞性卵巣症候群を引き起こす原因はなんですか?

排卵は、脳と卵巣で分泌される各ホルモンの働きによって起こります。始まりは脳の中にある視床下部と下垂体という部位です。
視床下部から性腺刺激ホルモン(GnRH)が信号を出すと下垂体が卵胞刺激ホルモン(FSH)を卵巣に向けて分泌し、卵巣で成長中の卵胞がFSHを受けて成熟していきます。この過程で卵胞は女性ホルモン(エストロゲン)を分泌し続けます。エストロゲンの十分な分泌によって下垂体が反応し、黄体形成ホルモン(LH)を急激に分泌することで排卵が起こるのです。
排卵後の卵胞は黄体に変わり黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌し、子宮内膜を厚くさせて月経に至ります。順調な排卵・月経のサイクルを保つためには、各ホルモンがバランスよく働くことが重要なのです。
しかし多嚢胞性卵巣症候群は、卵巣内の男性ホルモン(アンドロゲン)が通常よりも多いことが原因となり、排卵の仕組みを妨げます。男性ホルモンが卵胞の発育を抑え、卵巣の外側の膜を厚くしてしまうのです。
下垂体から出ている黄体形成ホルモンと血糖値を下げるインスリンというホルモンが卵巣に強く作用し、男性ホルモンを増やしていると考えられます。
月経中の血液検査では、黄体形成ホルモンが卵胞刺激ホルモンよりも高くなるという特徴があります。卵胞の成長に不可欠な2つのホルモンですが、バランスが乱れると排卵に至るまでの過程がうまくいかなくなるのです。
インスリン抵抗性(血糖値を下げるインスリンが効きにくい状態)がみられる人は、卵巣の男性ホルモン過多・黄体形成ホルモン分泌過多をもたらすとされています。排卵が起こる仕組みを阻害する状態です。

多嚢胞性卵巣症候群の主な症状はなんですか?

以下のような自覚症状はありませんか。心当たりがあれば多嚢胞性卵巣症候群の可能性があります。

  • 月経周期が35日以上ある
  • 月経が以前は順調だったのに不規則になった
  • にきびが多い
  • やや毛深い
  • 太っている

にきび・毛深さは男性ホルモンの影響、太っている人はインスリン抵抗性を生じている割合が高いと考えられます。多嚢胞性卵巣症候群を伴いやすい体質といえるでしょう。重症度が高いと排卵が起こらず、妊娠しづらくなってしまいます。
また治療せずに放置すると、子宮体がんやメタボリックシンドロームなどのリスクが高くなってしまうため注意してください。

多嚢胞性卵巣症候群の診断方法を教えてください。

以下の3つの特徴を満たした場合、多嚢胞性卵巣症候群と診断されます。

  • 生理不順・無月経・不正出血などの月経周期の異常がみられる
  • 超音波検査で卵巣内に育っていない多くの卵胞(ネックレスサイン)がみられる
  • 血液検査で黄体形成ホルモン(LH)や男性ホルモンが高い値になる

初経から生理が不規則という人や慢性的な生理不順という人は一度受診してみることをおすすめします。

編集部まとめ

お腹にハートマーク
多嚢胞性卵巣症候群は病気というよりも体質の一つと考えられるでしょう。その程度や原因も人それぞれで、自分に合った治療方法を選択することが大切です。

妊娠を希望している場合、または将来的な子宮体がんなどのリスクを減らすため、治療・改善する必要がある疾患ということを知っておいてください。

「生理が不規則で、にきびが多く毛深い体質」「間隔は長いけれど生理は来ているから大丈夫かしら?」といった人は、産婦人科で一度相談してみましょう。

この記事の監修医師

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