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「アルコール性肝障害の検査・治療法」はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2024/08/15

飲酒は大人の中でも人気な嗜好の1つで、イベントだけでなく日頃からアルコールを摂取している人も大勢いるでしょう。

アルコールは適度な摂取量であれば、そこまで大きな健康被害はありません。しかし毎日過剰に摂取していると、体へのダメージが大きいことをご存じでしょうか。

特に肝臓はアルコールの影響を受けやすく、体の異変に気付かず飲酒を繰り返していると最悪命を落としてしまう可能性があります。

本記事では、アルコール性肝障害に関する病態・症状・原因・治療法などについて解説します。日頃から過剰に飲酒を繰り返している人は、最後まで目を通してみてください。

※この記事はMedical DOCにて『「アルコール性肝障害」を発症すると現れる症状・飲酒以外の原因はご存知ですか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

アルコール性肝障害の検査と治療方法

研究する女性

受診するタイミングを教えてください。

肝臓は沈黙の臓器なので、自覚症状が出現した時点で発見が遅い場合が多いです。
倦怠感右肋骨下の痛み黄疸などの症状を自覚した際は肝機能障害の疑いがあるため、早めに医療機関へ受診しましょう。
また、肝障害を早期発見するためには定期的に健康診断や人間ドックなどで、血液検査を行うことが大切です。
血液検査でよく指摘されるのはASTやALTなどの肝機能異常です。血液検査で異常を指摘された場合は、医療機関へ受診し精密検査を受けましょう。
その時点では脂肪肝の状態で発見されることが多いです。脂肪肝であれば約1ヶ月ほど禁酒すれば改善が期待できるので、肝障害はどれだけ早く異常を発見できるかがとても重要です。
自覚症状があるから受診するのではなく、少なくとも年に1回は必ず健康診断を受けて血液に異常がないか調べてください。

どのような検査で診断されますか?

アルコール性肝障害は、以下の3つを評価して診断がつきます。

  • 肝機能異常の評価
  • 飲酒歴の確認
  • アルコール以外の原因による肝障害の除外

診断に必要な検査は主に血液検査です。
脂肪肝や肝炎は血液検査で診断できますが、肝硬変に関しては必要に応じて超音波検査CT検査も行います。
肝障害の診断基準は以下の通りです。

  • 過剰飲酒:1日平均純エタノール60g以上の飲酒
  • 女性やALDH2欠損者は1日40g程度の飲酒でもアルコール性肝障害が起こる
  • 禁酒により血清AST・ALT・γ-GTPが明らかに改善する
  • 肝炎ウイルスマーカー・抗ミトコンドリア抗体・抗核抗体がいずれも陰性である

また肥満者は1日平均純エタノール60gの飲酒に満たない場合でも、アルコール性肝障害を発症する可能性があります。因みに各種アルコール含有量は、以下の通りです。

  • ビール中瓶500ml:20g
  • 日本酒1合180ml:22g
  • 焼酎1合180ml:50g
  • ワイン1杯120ml:12g
  • ウイスキーダブル60ml:20g

断酒以外の治療方法を教えてください。

アルコール性脂肪肝に関しては断酒のみで改善されますが、過栄養を伴う生活習慣病を併発していることが多いので必要に応じて減量・糖質制限・脂質制限などの栄養管理を行います。
アルコール性肝炎を発症している人は、タンパク質やカロリー、他にも様々な栄養素が欠乏している状態なので高タンパク(1.5g/kg/日)高エネルギー食(35kcal/kg/日)を摂取します。またビタミン(ビタミンA・B・D・葉酸)や亜鉛といったミネラルも不足しているので、補充が必要です。
長期間の飲酒でビタミンB1が欠乏すると、多発神経炎やウェルニッケ脳症をきたし、ビタミンB12が欠乏すると大球性貧血や末梢神経炎を発症することがあります。
また、マグネシウムが不足していると振戦・せん妄などの症状が出ることもあるので、必要に応じて適宜補充します。
過剰に飲酒している人はアルコールの利尿作用による脱水や、乳酸の過剰摂取によってアシドーシスという体が酸性に傾く状態になってしまう可能性があるのです。
そのため乳酸を含む食材を不用意に投与すると、乳酸アシドーシスを引き起こしてしまう可能性があるので注意が必要です。
ほか重度のアルコール性肝炎では低脂肪食で改善される、抗酸化剤とステロイドの併用によって生存率が上がったというデータもあります。
肝硬変ではタンパク制限アミノ酸(BCAA)投与を行いますが、難治性の腹水がある場合は腹水穿刺・腹水濾過濃縮再静注法(CART)・腹腔シャントといった治療法を行うこともあります。
ただし、CARTなどは腹水の治療ではなく、腹水に対する対症療法であり、原因を解除する治療ではありません。
基本的には腹水が貯留してしまうと低タンパク血症や易感染性など多くの合併症が起こるため、腹水が貯留するような肝障害に至る前に治療を開始する必要があるといえるでしょう。

アルコール依存症の患者さんは専門的な治療が必要なのですね…。

まず大前提としてアルコール依存症を脱するためには断酒しなければなりません。
ですがアルコール依存症の人は、飲酒がコントロールできない状態なので、量や回数を減らそうとすると最初は可能であっても長期間行うのは自力だととても困難です。
飲酒問題を認めないことを克服することが、アルコール依存症の回復への近道です。
飲酒によって起きてしまった問題を家族や周囲の人が尻拭いしてしまうと、本人が問題を認めることを遠ざけてしまう結果になってしまいます。
回復するためには、家族の人が手助けしすぎないことも重要です。また回復に必要なのは、アルコール依存症の専門的な治療を行っている医療機関への受診やAAや断酒会といった、自助グループへの参加が大切です。
自分の意思だけでアルコール依存症を克服するのは、なかなか困難です。まずはアルコール依存症の専門である医療機関を受診し、しっかりと診断や治療を受け、断酒するための方法を専門家と相談することが回復への1番の近道になります。

編集部まとめ

こちらを見つめる医者
アルコール性肝障害は、症状を自覚しにくく発見時には病状が進行していることが多いです。早期発見のためには、定期的に血液検査を行う必要があります。

また禁酒すると改善が期待できる病態もあるので、自分で禁酒や節酒が難しいようであれば専門の医療機関へ受診し、医師に相談しましょう。

適度な飲酒を心がけて、体へ負担をかけないよう意識しながらお酒を楽しんでください。

この記事の監修医師