「ネフローゼ症候群」の症状・原因はご存知ですか?【医師監修】
公開日:2025/03/02

「最近足の浮腫が酷い気がする」という人は、もしかしたらネフローゼ症候群かもしれません。
ネフローゼ症候群とは糸球体の炎症でタンパクが漏れ出し、浮腫や体重増加などが出現する病気です。初期症状に気づきにくく、健康診断で判明することもあります。
原因が明確な場合と不明な場合があり、治療が遅れてしまうと透析を導入しなければいけなくなるかもしれません。
本記事では、ネフローゼ症候群の症状・原因などについて解説します。
※この記事はMedical DOCにて『「ネフローゼ症候群」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
目次 -INDEX-
ネフローゼ症候群の原因や症状
ネフローゼ症候群とはどのような病気ですか?
ネフローゼ症候群とは血液中に含まれているアルブミンというタンパクが大量に尿中に漏れ、血液中のアルブミン濃度が下がることで低タンパク血症になり、全身の浮腫や様々な症状が発生する疾患です。
アルブミンは血管内に水を引き込み、血流を維持する大事な役割を持っています。血中アルブミン濃度が下がると、血管外へ水分が漏れて溜まってしまうことにより、足・顔を中心として肺・心臓・腹部・陰嚢にも水が溜まります。
血液中にアルブミンが漏れ出るのは、腎臓にある糸球体が炎症を起こしたことが原因です。糸球体とは小さな穴が網目状に空いている微細な血管でできた組織で、ふるいのような役割を持ちます。
本来であれば穴を通過できないアルブミンが、糸球体の炎症によって穴を通過してしまい、尿となって排泄されます。糸球体が炎症を起こす原因は不明です。また低タンパク血症は血液中のコレステロールを増やすだけでなく、腎不全・感染症・心筋梗塞や脳梗塞のような血栓症を合併する危険もあります。
アルブミンは血管内に水を引き込み、血流を維持する大事な役割を持っています。血中アルブミン濃度が下がると、血管外へ水分が漏れて溜まってしまうことにより、足・顔を中心として肺・心臓・腹部・陰嚢にも水が溜まります。
血液中にアルブミンが漏れ出るのは、腎臓にある糸球体が炎症を起こしたことが原因です。糸球体とは小さな穴が網目状に空いている微細な血管でできた組織で、ふるいのような役割を持ちます。
本来であれば穴を通過できないアルブミンが、糸球体の炎症によって穴を通過してしまい、尿となって排泄されます。糸球体が炎症を起こす原因は不明です。また低タンパク血症は血液中のコレステロールを増やすだけでなく、腎不全・感染症・心筋梗塞や脳梗塞のような血栓症を合併する危険もあります。
一次性ネフローゼ症候群の原因は?
一次性ネフローゼ症候群とは腎臓に主に原因で、指定難病の1つです。一次性ネフローゼ症候群には、微小変化型ネフローゼ症候群・膜性腎症・巣状分節性糸球体硬化症・膜性増殖性糸球体腎炎があります。
微小変化型ネフローゼ症候群とは、腎生検をしても糸球体に障害がない、もしくは少しだけ変化が認められるものをいいます。特徴は若年者に多く発症も急激です。ステロイド治療で効果は期待できますが、ステロイドの投与量を減らすと約半数の人に再発がみられます。
膜性腎症というのは、ふるいの役割をする糸球体に抗体ができることで糸球体の構造を変化させ、本来通過できないアルブミンが通過し尿に排出されてしまう腎症です。約75%の人が原発性、約25%の人が二次で、二次性は感染症・悪性腫瘍・薬剤性・膠原病などが原因になります。
原発性は20年で約40%の人が慢性腎不全になるというデータがあり、特にタンパク尿が多い人は腎機能が低下しやすいといわれています。巣状分節性糸球体硬化症は腎生検で部分的な硬化が認められる疾患で、ステロイド治療を行っても効果が乏しい難治性ネフローゼ症候群の代表疾患です。
この疾患は原発性と逆流性腎症による続発性に分類されます。膜性増殖性糸球体腎炎は血尿を伴い、糸球体が分かれた葉っぱのようにみえる比較的稀な腎炎です。約10%は原発性で小児から若年者にみられることが多く、残り約90%は二次性です。二次性の代表的な原因はC型肝炎・溶連菌・MRSAなどの感染症で、ほかにも膠原病やリンパ腫などに合併して発症することもあります。
微小変化型ネフローゼ症候群とは、腎生検をしても糸球体に障害がない、もしくは少しだけ変化が認められるものをいいます。特徴は若年者に多く発症も急激です。ステロイド治療で効果は期待できますが、ステロイドの投与量を減らすと約半数の人に再発がみられます。
膜性腎症というのは、ふるいの役割をする糸球体に抗体ができることで糸球体の構造を変化させ、本来通過できないアルブミンが通過し尿に排出されてしまう腎症です。約75%の人が原発性、約25%の人が二次で、二次性は感染症・悪性腫瘍・薬剤性・膠原病などが原因になります。
原発性は20年で約40%の人が慢性腎不全になるというデータがあり、特にタンパク尿が多い人は腎機能が低下しやすいといわれています。巣状分節性糸球体硬化症は腎生検で部分的な硬化が認められる疾患で、ステロイド治療を行っても効果が乏しい難治性ネフローゼ症候群の代表疾患です。
この疾患は原発性と逆流性腎症による続発性に分類されます。膜性増殖性糸球体腎炎は血尿を伴い、糸球体が分かれた葉っぱのようにみえる比較的稀な腎炎です。約10%は原発性で小児から若年者にみられることが多く、残り約90%は二次性です。二次性の代表的な原因はC型肝炎・溶連菌・MRSAなどの感染症で、ほかにも膠原病やリンパ腫などに合併して発症することもあります。
二次性ネフローゼ症候群の原因は?
原因は、代謝性疾患・膠原病・悪性腫瘍・感染症・アレルギー・非ステロイド系抗炎症薬など様々です。二次性ネフローゼ症候群を引き起こす代表的な疾患は糖尿病・全身性エリテマトーデス・特定のウイルス感染症です。
二次性ネフローゼ症候群には糖尿病性腎症・ループス腎炎・アミロイドーシス・紫斑病性腎炎などがあります。糖尿病性腎症とは、糖尿病の代表的な合併症である腎症・網膜症・末梢神経障害のうちの1つで、糖尿病発症後10〜15年以上経過して発症することが多いです。
また血液透析導入となる原因疾患の1位でもあり、血糖コントロールや食事管理が非常に重要です。ループス腎炎とは自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスに合併して発症する腎炎で、糸球体に様々な障害を及ぼし腎機能を低下させます。
治療はステロイド投与と免疫抑制剤投与を複合的に行いますが、治療効果が乏しく進行性の腎不全をきたしてしまうと透析や腎移植などが必要になる場合もあります。アミロイドーシスはタンパク質が凝縮してアミロイドになり、臓器に付着することで発症する難病の1つです。限局性と全身性があり、全身性の場合は治療が遅れると死に至ることもあります。
紫斑病性腎炎とは血管性紫斑病の症状の1つであり、糸球体にIgAが沈着することで発症します。予後は比較的良好ですが、経過観察を中断すると再発したり腎炎の進行を見逃したりする可能性があるので、注意が必要です。
二次性ネフローゼ症候群には糖尿病性腎症・ループス腎炎・アミロイドーシス・紫斑病性腎炎などがあります。糖尿病性腎症とは、糖尿病の代表的な合併症である腎症・網膜症・末梢神経障害のうちの1つで、糖尿病発症後10〜15年以上経過して発症することが多いです。
また血液透析導入となる原因疾患の1位でもあり、血糖コントロールや食事管理が非常に重要です。ループス腎炎とは自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスに合併して発症する腎炎で、糸球体に様々な障害を及ぼし腎機能を低下させます。
治療はステロイド投与と免疫抑制剤投与を複合的に行いますが、治療効果が乏しく進行性の腎不全をきたしてしまうと透析や腎移植などが必要になる場合もあります。アミロイドーシスはタンパク質が凝縮してアミロイドになり、臓器に付着することで発症する難病の1つです。限局性と全身性があり、全身性の場合は治療が遅れると死に至ることもあります。
紫斑病性腎炎とは血管性紫斑病の症状の1つであり、糸球体にIgAが沈着することで発症します。予後は比較的良好ですが、経過観察を中断すると再発したり腎炎の進行を見逃したりする可能性があるので、注意が必要です。
ネフローゼ症候群の症状について教えてください。
ネフローゼ症候群の代表的な症状は浮腫・タンパク尿(尿の泡立ち)・低タンパク血症・易感染・凝固能亢進です。
自覚症状が乏しく、健康診断の尿検査で発覚することもあります。浮腫は長時間の立ち作業やデスクワークなどでも出ますが、ネフローゼ症候群の場合は下腿前面(弁慶の泣き所)を10秒ほど押してへこみが持続するほどの浮腫が出ます。尿の泡立ちが必ずしもタンパク尿とは限りませんが、タンパク尿は尿の泡立ちがみられることが多いです。
浮腫が全身に広がり悪化すると急激な体重増加だけでなく、肺(胸腔内)や腹部(腹腔内)に水が溜まることで苦しさ・食欲低下・腹痛・陰嚢水腫などもみられます。腎機能が低下し、血液量が増えると高血圧・肺水腫・心不全を引き起こす可能性もあります。
自覚症状が乏しく、健康診断の尿検査で発覚することもあります。浮腫は長時間の立ち作業やデスクワークなどでも出ますが、ネフローゼ症候群の場合は下腿前面(弁慶の泣き所)を10秒ほど押してへこみが持続するほどの浮腫が出ます。尿の泡立ちが必ずしもタンパク尿とは限りませんが、タンパク尿は尿の泡立ちがみられることが多いです。
浮腫が全身に広がり悪化すると急激な体重増加だけでなく、肺(胸腔内)や腹部(腹腔内)に水が溜まることで苦しさ・食欲低下・腹痛・陰嚢水腫などもみられます。腎機能が低下し、血液量が増えると高血圧・肺水腫・心不全を引き起こす可能性もあります。
編集部まとめ
ここまでネフローゼ症候群について解説しました。ネフローゼ症候群は初期症状に気づきにくく、健康診断で発覚することもあります。
普段よりも浮腫が酷く、尿の泡立ちや体重増加がある場合はネフローゼ症候群かもしれません。体調に異変を感じたら、腎臓内科もしくは泌尿器科へ受診してください。
また明確な原因が分からないため予防することも難しいですが、ストレス・疲労・塩分やタンパク質の過剰摂取は腎臓に負担をかけてしまいます。
腎臓への負担を減らすために、日頃から規則正しい生活を送るよう意識しましょう。