「アルツハイマー型認知症の5つの初期症状」とは?原因やなりやすい人も医師が解説!
公開日:2025/12/24

アルツハイマー型認知症とは、認知症の中のひとつであり、脳の一部が萎縮していく過程で起きる病気です。
進行速度は遅いですが、もの忘れを起こすなど日常生活に支障を来たすこともある場合もあります。
身近な病気ですが、具体的な症状などご存じでない方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、アルツハイマー型認知症の症状や原因について解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
※この記事はメディカルドックにて『もし家族が「アルツハイマー型認知症」を発症したら、あなたならどのように接しますか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
目次 -INDEX-
アルツハイマー型認知症の症状や原因

アルツハイマー型認知症とはどんな病気ですか?
- アルツハイマー型認知症は、認知症の中のひとつであり、65歳以上の方がかかる認知症の中では最も多いタイプの病気です。
- この病気にかかると記憶障害・判断能力の低下・見当識障害などの症状が現れるようになります。
- 現在でも、完治させる具体的な治療方法は解明されていません。しかし、進行を遅らせる薬はあるため、その服用により病気の悪化を防ぐことができます。
- 薬の服用で、これまでの日常生活と同様の暮らしを続けていけるようにできるのです。そのためにも、早期発見が非常に重要な病気でもあります。
認知症との違いが知りたいです。
- 認知症とは、さまざまな種類の認知症の総称です。その中に、アルツハイマー型や血管性認知症・若年性・レビー小体型などがあります。
- それぞれ、主な症状が大きく異なります。
- アルツハイマー型は、先述したように記憶障害や見当識障害が顕著に見られる点が特徴です。
- 若年性は、初期症状は軽度なもの忘れ・見当識障害・実行機能障害などが見られます。しかし、進行すると日常的に行っていたことができなくなる・不安や抑うつなどを引き起こすようになり、悪化すると表情が乏しく・寝たきりとなることもあります。
- レビー小体型は、アルツハイマー型に次いで多い病気です。認知障害機能・幻視・パーキンソン症状といった症状を引き起こします。
- 血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血などによって引き起こされる病気です。
- 血管が詰まっている部位によって、失われる機能が異なる点が特徴で、その症状は様々なものが現れます。
症状について教えてください。
- この病気の症状は、次のようなものが挙げられます。
- 人・場所の見当識障害
- 失認・失行
- 失語
- 古い記憶の障害
- 徘徊
- ろうべん・失禁
- 異食
- 人や場所の見当識障害とは、肉親が誰かわからなくなったり、今自分がどこにいるのかわからなくなったりすることです。自宅にいても場所がわからなくなり、明らかな異常行動を示す場合もあります。
- 自宅にいるにもかかわらず、家に帰るなどと言い出すこともあります。また、誰が家族で介護の人か認識もできなくなることも多いです。
- 失認・失行とは、日常生活でできていた動作ができない状態です。文字が読めない・時計が読めない・ハサミなどの使い方がわからないといった、当たり前にできていた日常的な動作が困難になります。
- 失語とは、見えるものや聞こえる音が何か認識できない・言われたことを理解できない・すぐに言葉が出ない・言い間違いが頻発するといった症状です。その他にも、繰り返し同じことをいう反響言語・保続・語感代なども現れることがあります。
- 古い記憶の障害とは、古い記憶を忘れてしまうことです。重症の場合は、日常生活に支障が出ることも多くなります。
- 徘徊は、自分がどこにいるかわからなくなっていることで起きる症状です。非常に危険が伴う行動なので、この症状が見られる場合は特に注意が必要となります。
- ろうべん・失禁とは、排泄物を触ったり壁や床にこすりつけたりする行為のことです。また、この病気になると便意を抑制できず漏らしてしまうことがあります。
- 異食は、本来食べ物ではない物を食べてしまうことです。窒息や中毒の原因となり、大変危険です。
初期症状はありますか?
- この病気の初期症状はあります。先述したような症状は、どちらかというと病気が進行して、中期から後期に見られるひどい症状です。
- 初期症状としては、次のようなものが挙げられます。
- もの忘れ
- 時間の見当識障害
- 実行機能障害
- 自発性の低下
- 被害妄想
- この病気の初期症状として現れるもの忘れと加齢によるもの忘れでは、大きな違いがあります。
- まず、病気によって引き起こされるもの忘れは、脳の記憶領域である海馬が萎縮しているために引き起こされます。そのため、最近のことほど忘れる・全体的に忘れるといった特徴があるのです。
- 加齢によるもの忘れの場合、体験した一部分を忘れる・判断力は低下しない・ヒントを与えたら思い出すなどの特徴があります。しかし、病気による場合は、ヒントを与えても思い出せません。忘れたことの自覚もないのです。
- 時間の見当識障害とは、昼夜・日時・季節の取り違えが発生する状態です。
- 実行機能障害とは、手順・計画が必要な行動を遂行するのが難しくなる状態をいいます。例えば、料理などが代表的です。
- 自発的に考え行動するといった自発性の低下も現れ、だらしないと言われることもあります。
- 被害妄想とは、ものを盗まれたなどと、起きてもいないことを疑うようになることです。
原因は何ですか?
- この病気の原因は、未だはっきりと解明されていません。
- 現時点での原因の見解としては、脳内にたまる蛋白質の蓄積によって引き起こされていると考えられています。
- アミロイドβと呼ばれる蛋白質が神経細胞を変性させ、進行すると脳全体に萎縮が広がっていくのです。
- しかし、このアミロイドβがなぜ脳に蓄積されるのかまでは、はっきりと解明されていません。そのため、原因・治療方法もはっきりとわかっていないのです。
なりやすい人の特徴はありますか?
- この病気にかかりやすいかどうかは、遺伝的な要因の有無が関係します。必ずしも遺伝で発症するとは限りませんが、近親者に患者がいない方よりも、いる方のほうが罹患しやすい傾向にあります。
- しかし、こちらも十分には解明されていません。また、次のような方もなりやすいと考えられます。
- 年齢が65歳以上の高齢者
- 心血管疾患
- 喫煙
- 教育期間
- 頭部外傷
- 高齢の方がなりやすいといわれ、この病気にかかっている方は65歳以上の方がほとんどです。また、心臓や血管に影響する疾患の多くとの関係が深いといわれており、高血圧・心臓疾患・糖尿病などにより危険性が高まるといわれています。
- つまり、生活習慣が乱れていると、この病気になりやすい傾向があるということです。
- 喫煙との関係性も強いといわれています。この喫煙も、生活習慣病の要因となるものであり、動脈硬化や血管性病変につながるだけでなく、神経変性の進行にも影響を及ぼします。この神経変性も、アルツハイマー型認知症を引き起こす原因のひとつです。
- さらに、教育とも関係が深いと研究されています。長く教育を受けた方程なりにくく、教育期間が短い方程なりやすいといわれているのです。
- 繰り返し頭部外傷を受けた方も、なりやすいといわれています。意識喪失を起こすほどの外傷の場合、タウが過剰に蓄積するため、病気にかかるリスクが高まると考えられているのです。
- このように、なりやすい人の特徴としては、さまざまな要素が考えられています。
編集部まとめ

アルツハイマー型認知症は、日常生活への影響が大きい重い病気です。万が一、初期症状が確認できた場合は、早く医療機関を受診しましょう。
また、病気が進行してしまった場合は、家族でサポートや介護などを楽しく行って、進行を遅らせるようにしましょう。
そのためにも、予防方法や治療方法などの正しい知識を身につけておくことは大切です。大切な家族がかかった場合に備え、楽しく生活してもらえるように支えましょう。