「無症候性心筋虚血」が重症化した時のリスクとは?診断方法や治療法を医師が解説!

無症候性心筋虚血とは、心筋に血流の不足があるのにもかかわらず症状がない状態をいいます。
症状がないため知らず知らずのうちに重症化し、突然心筋梗塞を起こしたり突然死の原因となったりする重大な病気なのです。
今回はこの無症候性心筋虚血について質問にお答えしましょう。重症化リスクや検査・治療の方法についても解説しています。ぜひ参考にしてください。
※この記事はメディカルドックにて『「無症候性心筋虚血」の症状・原因はご存知ですか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
無症候性心筋虚血の診断と治療

無症候性心筋虚血はどのように診断しますか?
無症候性心筋虚血の診断は問診で既往歴や現在の症状などを確認し、虚血性心疾患の可能性を探ります。
可能性がある場合は検査を行ってさらに詳しく状態を確認して診断します。
検査内容はさまざまですが、その中からできるだけ身体に負担の少ない検査方法が選ばれるのです。
無症候性心筋虚血の検査内容を教えてください。
無症候性心筋虚血の検査内容には次のようなものがあります。
- 心電図
- 心臓エコー検査
- 心筋シンチグラフィー
- 冠動脈CT検査
- 心臓MRI検査
まず心電図や心臓エコーで冠動脈に疾患が認められるかを確認し、疾患が認められればさらに詳しく検査が行われます。
心筋シンチグラフィーは微量の放射性物質で血流を検査する方法です。
冠動脈CT検査・心臓MRI検査なども同様に詳細を確認するために行われます。
その結果を受けて年齢や症状に応じた治療が行われるのです。
重症化してしまった場合のリスクを教えてください。
無症候性心筋虚血は自覚症状がないために重症化してしまう可能性があります。
そのため心不全や不整脈を引き起こすリスクをかかえており、それによって命にかかわることもあるので充分な注意をして治療を行うことを考えてください。
重症化しないために行う治療は次のような方法で行われます。
- 薬物療法
- カテーテル療法
- 手術療法
無症候性心筋虚血では症状がないので、心不全などの重症化を防ぐ意味での治療です。
薬物療法では抗血小板薬(血栓を防ぐ)・カルシウム拮抗薬(冠動脈を拡張させる)・β遮断薬(心筋の酸素消費を抑える)などが処方されます。
カテーテル療法はバルーンカテーテルを挿入して冠動脈の狭窄部分を拡げる療法です。
手術療法としては自分自身の動脈・静脈を採取して狭窄部に縫合して血液を流すバイパス手術が行われます。
手術することもあるのでしょうか?
治療の方法で解説したように、無症候性心筋虚血で行われる手術はバイパス手術です。
バイパス手術は冠動脈の狭窄部分を拡げるのではなく、自分自身の血管を狭くなった血管の先に繋ぎ血液の通り道を作る手術です
新しい血管には胸や胃から動脈を、静脈を足などから採取されたものが使用されます。
バイパス手術の他にカテーテル療法がありますが、どちらを選択するかは患者さんの症状や状況に応じて決められるのです。
血管の狭窄部分が複数ある場合や太い血管部分が詰まっている場合にはバイパス手術が行われます。
また糖尿病や透析を行っている腎臓病の患者さんの場合も血管を改善できるバイパス手術が優先されます。
そして年齢や症状を考慮して、高齢の場合は手術のリスクを考えカテーテル療法が選択されることもあるのです。
編集部まとめ

今回は心筋に送られる血液が虚血状態にあるにもかかわらず自覚症状のない、無症候性心筋虚血について解説しました。
自覚症状がない疾患のため、重症化すると突然死や心不全などを起こすことも考えられる病気です。
怖い病気ではありますが定期的に健康診断を行うことで発症を抑えることができ、適切な治療を行い生活習慣を見直すことで完治も可能です。
特に高血圧や糖尿病などの基礎疾患のある人は、動脈硬化を起こさないよう充分注意してください。