「ワレンベルグ症候群(脳梗塞の一種)の後遺症」で多い症状はご存知ですか?【医師監修】
公開日:2025/11/19

ワレンベルグ症候群は、脳梗塞と同様に脳の血管が傷ついてしまう疾患です。通常の脳梗塞は大脳部分の血管損傷が多いですが、ワレンベルグ症候群が起きるのは延髄外側です。
発生部位が違うため、通常の脳梗塞と違う症状が起こります。また、MRIなどの画像診断が非常に難しい疾患でもあるのです。
しかし、ワレンベルグ症候群には脳梗塞と区別しやすい特徴的な症状がいくつかあります。ここでは、ワレンベルグ症候群の予後や予防方法について詳しく解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「ワレンベルグ症候群(脳梗塞の一種)」を発症しやすい人の特徴はご存知ですか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
目次 -INDEX-
ワレンベルグ症候群予後と予防

ワレンベルグ症候群は完治しますか?
- ワレンベルグ症候群は中枢神経系を損傷してしまう疾患です。中枢神経系は一度損傷すると元には戻らないため、後遺症が残ります。
- 発症初期に治療ができれば一定以上の回復は見込めますが、それ以上治ることはなく、ほぼ確定的に後遺症が残る疾患です。
後遺症はありますか?
- 後遺症はあります。ただし、後遺症は通常の脳梗塞とは違います。後遺症で比較的多いのは温痛覚障害をはじめとした感覚障害と、食べ物が飲み込みにくくなる嚥下障害です。
- 温痛覚障害に対しては温水・冷水を使用したリハビリや、感覚を視覚化して触感以外からアプローチするリハビリが行われます。
- 嚥下障害は、最悪の場合は嚥下したものが気道に入ってしまう誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。そのため、日頃から嚥下に使う筋肉の運動訓練や口腔ケアを行うことが多いです。誤嚥性肺炎が慢性化する場合はバルーンカテーテルを使用した食道を広げる訓練を行います。
ワレンベルグ症候群の予防方法があれば知りたいです。
- 具体的な予防方法はありませんが、高血圧・糖尿病をはじめとした生活習慣病は特にリスクが高いため避けるようにしましょう。
- また、もし頸部を強く打ったり過伸展を起こした場合も延髄外側の血管が損傷する原因となることがあります。こういった外傷を負った場合は安静にし、感覚障害などが起きた場合には必ず医師の診察を受けるようにしてください。
- 早めの診察を受けることで、後遺症も比較的軽くなる場合があります。
最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。
- 通常の脳梗塞と違い、ワレンベルグ症候群は非常に診断がしづらい疾患です。そのため、患者さんご自身に自覚症状を申告してもらうことが大切になります。
- 数日以内の頭痛やどの部分に感覚障害が起きているかなど、細かいことでもいいので医師に伝えるようにしてください。
- もし周囲にワレンベルグ症候群となってしまった方がいる場合には、誤嚥や温痛覚障害など気をつけるべきポイントを押さえながら支えることが必要になります。
編集部まとめ

ワレンベルグ症候群は延髄外側に起こる脳梗塞です。ただし、通常の脳梗塞と違い麻痺などの症状は起こりません。
通常の脳梗塞と違う部位に起きるため、温痛覚などの感覚障害や嚥下機能障害が多くなっています。
後遺症が残ることがほとんどなため、発症してしまうと長期間のリハビリが必要になります。
もし周囲の方がワレンベルグ症候群になってしまった場合は、誤嚥しないように見守るなどのサポートをするようにしてあげてください。
参考文献