分かりづらい手首の骨折…「舟状骨骨折を放置する」とどうなる?後遺症も医師が解説!
公開日:2025/11/29

転んで手をついてしまったとき、比較的骨折しやすくしかも骨折の判断がしにくいのが舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折です。
舟状骨骨折は捻挫だと考えて放置してしまうことで、偽関節(骨がつかず関節のようになる)になることも少なくありません。
今回はこの舟状骨骨折について解説していきましょう。治療期間や後遺症についてもお答えしています。
スポーツなどでの転倒や衝撃で起こりやすい骨折なので受診の参考にしてください。
※この記事はメディカルドックにて『「舟状骨骨折(しゅうじょうこつこっせつ)」はどれくらいの期間で治るかご存知ですか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
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舟状骨骨折の予後

舟状骨骨折を放置するとどうなりますか?
- 舟状骨骨折は骨折が見つけにくいことに加えて、初期症状としての痛みや腫れがそれほどひどくないため捻挫だろうと放置しがちです。舟状骨骨折を放置してしまうと偽関節になってしまいます。
- 偽関節とは骨がつかずに関節のように動くことをいいますが、偽関節になると手首の痛みや運動機能の低下などが起ります。
- 偽関節になった場合は手術が必要になるので初期段階でレントゲン検査だけでなく、CT検査・MRI検査を行い骨折の有無をはっきりとさせることが大切です。
後遺症が残ることもあると聞いたのですが…。
- 舟状骨骨折の後遺症として、偽関節となることが挙げられます。また骨折部分が変形したまま治癒してしまうこともあるので注意が必要です。この場合も偽関節同様痛みが長く続き、手首を動かすことが難しくなります。
- 舟状骨の血流は不安定になりやすく、虚血性壊死を引き起こすこともあります。いずれの場合も手術が必要となることが多いです。
- ギプスで固定し骨折は治癒したものの、手関節部が拘縮して固まってしまい動かしにくくなったというケースもあります。
手術とギプス固定で治療後の経過に違いはありますか?
- ギプス固定では6週間〜12週間というほど固定する期間が長くかかります。ギプスが取れた後もリハビリで筋力の強化や可動域を広げる必要があるのです。そのためギプス固定ではやはり完全治癒までかなり長い期間を要します。
- 特に若い方は1日でも早く仕事に復帰したいと希望することが多いので、その場合には手術でスクリュー固定を行います。
- 手術を行った場合は4週間ほどの固定で日常生活が可能になり、4ヶ月〜5ヶ月でスポーツにも復帰できるでしょう。通常の生活・パソコン作業・車の運転などは手術を行うことで比較的早く可能となります。
- このような臨床経過の違いが主なものですが、合併症や後遺症が起こりやすい骨折なのでどちらにしてもしっかりと医師に相談して決めることが大切です。
家族が舟状骨骨折になった場合、どのようにサポートしたら良いでしょう?
- 家族がスポーツの試合中などに転倒して舟状骨の骨折が疑われる場合は、まず受診して骨折の有無をしっかりと確認しましょう。ギプス固定になったときは早いうちに固定を外さないように見守ってください。
- 若い方の場合は手術でスクリュー固定をして早めの復帰を希望することも多いので、無理なく復帰できるようにサポートが必要になります。
- また高齢の方の転倒でも舟状骨骨折となる可能性があります。痛みが少なくても受診して骨折していないかを確認してください。
- また高齢の方の場合は長くギプス固定をすることで手首が固まってしまい動かしにくくなる場合もあるので、スクリュー固定を希望される方がよいでしょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
- 舟状骨骨折は10代〜20代後半の若い方に多い骨折です。舟状骨はその場所や角度から骨折線がレントゲンに写りにくいのです。そのため骨折を見逃してしまうことも少なくありません。
- 転倒したときに手のひらを強くつき、腫れや痛みがある場合には舟状骨骨折の可能性が高いです。捻挫だと自己判断せず、必要ならCTやMRIの検査をして骨折所見があるかどうかの診断をあおぎましょう。
- 放置すると手首の痛みが続き、動かしにくくなる偽関節になることも多いです。舟状骨骨折は治りにくい骨折ではありますが、最近ではスクリューの開発も進んでいます。
- スクリュー固定で比較的早い時期に日常生活が行えるようになっています。骨折を疑う場合は早めに受診してください。
編集部まとめ

骨折の中でも骨がつきにくい舟状骨骨折は、スポーツなどの転倒で起こる確率の高い骨折です。
レントゲンで確認しにくい骨折でもあるため見逃してしまうこともあり、治癒が遅れたり骨の壊死や偽関節になったりと合併症も多いです。
強く手をついた転倒では、痛みや腫れがそれほどひどくなくても舟状骨骨折している可能性があるのでしっかりと確認することが大切になります。
くれぐれも自己判断で骨折を見逃してしまうことのないように、早めの受診をおすすめします。
参考文献