【痙性斜頸】首や肩に何の症状があったら受診した方が良い?検査法・治療法も解説!
公開日:2025/12/29

痙性斜頸は自分の意思に反して首が勝手に動き傾いたり、可動範囲が狭まったりする局所性ジストニア(異常な筋肉の緊張症)の1つです。
突然に発症する病気で、不自然な姿勢や無理に元に戻そうとすると痛みをともなうことなど、精神的にも辛い思いを強いられることの多い病気です。
今回はこの痙性斜頸の受診の目治療方法や予防方法について解説しているので参考にしてください。
※この記事はメディカルドックにて『「痙性斜頸(けいせいしゃけい)」は「肩の痛みやしびれ」といった症状が現れるの?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
目次 -INDEX-
痙性斜頸の検査方法と治療方法

病院を受診する目安を教えてください。
- 痙性斜頸は放置していると悪化してしまう可能性が大きい病気です。ただ初期段階では肩こりや首の違和感を感じる程度なので痙性斜頸だと分からないことが多いのです。
- そのために悪化してしまうこともあります。1ヶ月以上肩こりや首の痛みが続くなど症状が長く続く場合や、頭が一方向にだけ回しにくい・動かした時に痛むなどの違和感があれば受診しましょう。
何科を受診すれば良いですか?
- 痙性斜頸はさまざまな原因による場合がありますが、まずは神経内科・脳神経外科・整形外科などを受診されるとよいでしょう。検査の結果、治療法によっては外科治療やリハビリが必要なこともあります。
- また神経科医をはじめ精神科医・心理士などチームでの対応が必要な場合もあるのです。
どのような検査を行いますか
- まず行われるのは胸鎖乳突筋の硬さを確認する検査です。この検査で筋性斜頸と診断された場合は超音波検査で詳細を確認します。
- その他の斜頸の可能性も含めてレントゲン検査を行いさらに詳しく症状の確認が行われるのです。
- また、病気の原因になり得る疾病がないか確認するためにMRI検査が行われる場合もあります。
治療方法を教えてください。
- 主な治療としては次の方法が取られます。
- 神経ブロック
- 理学療法
- 薬物療法
- 生活指導
- 外科的療法
- 神経ブロックでは失調筋肉へボツリヌス毒素を直接注射することによって、神経筋伝達を阻害し筋収縮を抑制します。
- この方法によって約70%の患者の症状が軽減されていますが、それは1〜4ヶ月ほどの間で、繰り返し毒素を注入することにより効果が薄れる場合もあるのです。また理学療法には次のような方法が挙げられます。
- 関節可動域訓練
- ストレッチ
- 自己矯正
- 筋電図バイオフィードバック療法
- 理学療法では理学療法士のもとでエクササイズやストレッチを行い、筋電図バイオフィードバック療法で筋電図で筋肉の緊張を緩める訓練を行います。薬物療法は抗てんかん薬や精神安定薬などが使われ疼痛の軽減が期待できます。
- ただ薬物療法が有効なのは痙性斜頸患者の30%前後の場合が多いです。生活指導では睡眠を充分にとることやストレスを避けることなど日頃の生活についてのアドバイスを行います。
- 外科的治療(手術)には深層部刺激療法・選択的末梢神経遮断術などがあります。効果的なのは侵された頸筋への神経を選択して切断し、頸筋の筋力を永続的に弱めたり麻痺させたりする手術です。
- 他に緊張した筋肉に麻酔薬・エタノールを注射するMAB療法も何度か繰り返して行うことで有効とされています。
- また、ある行動や感覚を刺激することで一時的に症状が消える知覚トリックを上手に利用することを治療に取り入れることもあります。
- 鍼や漢方薬処方で症状が軽減した例もあるので医師に相談してみるのもよいでしょう。
治療はどの位の期間が必要ですか?
- たとえばボツリヌス毒素の注射の場合、3〜4ヶ月効果が持続することが多いのですが、やはり数回は実施する必要があります。
- 治療の期間は症状にもよるためどの位とはっきりとはいえませんが、5年位で症状が改善することが多いです。
- 焦らずに根気強く治療を続けることが大切です。
編集部まとめ

今回は局所性ジストニアの1つ、痙性斜頸について解説しました。痙性斜頸と診断され、不安な気持ちに襲われる方は多いでしょう。
ただ病気の原因はまだはっきりと解明されていませんが、研究も進み治療方法も症状に併せて効果が期待できることが分かってきました。
早めの受診・治療で治癒の可能性も高くなります。難しいことではありますが、ストレスを避け希望を持って病気と向き合ってください。