「妄想性パーソナリティ障害の原因」は誰からの影響が大きい?【医師解説】

仕事や人間関係・家庭事情などでストレスを感じやすい現代では、精神疾患を抱えている人が年々増えています。
精神疾患は原因に個人差があり治療法もその人に合わせた方法でないと悪化する可能性があるため、改善には長期に渡る努力が必要不可欠です。
その中で今回は、日本人の約5%の人が当てはまるという妄想性パーソナリティ障害について病態・症状・原因を紹介します。
※この記事はメディカルドックにて『「妄想性パーソナリティ障害」になると感じる症状や原因はご存知ですか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
目次 -INDEX-
妄想性パーソナリティ障害の症状と原因

妄想性パーソナリティ障害の症状を教えてください。
- 症状として基本的に他者が自分を傷つけているという考えを持っているため1つ1つの言動や行動に対して疑念を抱き、その疑念を裏付けるために詳細を深掘りして、他人の言動や行動に対しての意味を探るという特徴があります。
- 恋人等に対しての嫉妬心が強い傾向にあり、恋愛や家庭内では執拗に疑いをかけて自分の考えを正当化するために事細かに問いただすことも多くあります。
- 常に警戒心を抱いていることから自分や周りを苦しめ人間関係も構築が難しく、自分自身の本心を相手に打ち明けることはあまりありません。
- 他人から自分の考えや価値観を否定されるとより「傷つけられた」という思考になり、より過剰に反応して攻撃性を出す場合もあります。
「パーソナリティ障害」とはどのような意味でしょうか?
- パーソナリティ障害とは、自分が他人と考え方や価値観が異なることによって自分自身や周囲の人に支障をきたしていることを指し、主に3つのグループ・10種類に分類され、基本的な部分は共通していますがそれぞれに際立った特徴も見られます。
- Aグループは奇妙または風変わりな様子を特徴とします。
- 妄想性:不信と猜疑心
- シゾイド:他者に対する無関心
- 統合失調型:奇妙または風変わりな思考と行動
- Bグループは演技的、感情的、または移り気な様子を特徴とします。
- 反社会性:社会的無責任、他人の軽視、欺瞞、自分の利益を得るための他人の操作
- 境界性:一人でいることに関する問題(見捨てられる恐れによる)、感情や衝動的行動をコントロールすることの問題
- 演技性:人の注意を引きたい欲求と劇的な行動
- 自己愛性:もろい自尊心、賞賛される必要性、および自分の価値についての過大評価(誇大性と呼ばれる)
- Cグループは不安や恐れを抱いている様子を特徴とします。
- 回避性:拒絶される恐れによる対人接触の回避
- 依存性:服従と依存(世話をしてもらう必要性による)
- 強迫性:完全主義、柔軟性のなさ、頑固さ
- またどの分類にも当てはまることですが、基本的にはストレス対処や人間関係の構築が困難な人が多く、日常生活において生きづらさを感じている特徴があります。
- 約10%の人はパーソナリティ障害があり、症状に個人差がみられます。
- 自分自身に対しての明確なイメージがついていないので、他人との関わりに対し一貫性があまりみられません。
- 優しく対応できる時と強く当たってしまう時と様々で、その対応が頻繁に変化する人もいます。
- 故に人間関係が上手く成り立たず、家庭を持っている人などはその影響が子供に及んでしまうこともあるのです。
- パーソナリティ障害を引き起こす原因として、遺伝や環境要因だけでなく元々発達障害を抱えていたり、SNSの普及による誹謗中傷なども近年問題として取り上げられています。
妄想性障害と妄想性パーソナリティー障害の違いを教えてください。
- 妄想性パーソナリティ障害とは簡単に説明すると、幅広い対人関係において支障をきたすパーソナリティ障害のことを指し、青年期から成人初期に発症しやすく、女性よりも男性の方が割合が多いです。
- また、被害妄想によって他者の言動や行動が全て不信感に変わる根拠のない考えを持つ特徴があります。
- 妄想性パーソナリティ障害の人は他の精神疾患を合併していることもあり、「不安障害」「統合失調症」「うつ病」「アルコール依存症」「摂食障害」等が特に挙げられる疾患です。
- 症状には個人差があり比較的軽い症状の人もいれば、他の精神疾患も合併して症状が重い人もいます。
- 似た症状である妄想性障害とは、現実・非現実なことを含め思い込みが激しく、その状態が1ヶ月以上持続することをいいます。
- 。妄想性パーソナリティ障害に起因して発症することが多く、妄想性障害は成人中後期に発症しやすいのが特徴です。
- 妄想性障害は「被愛型」「誇大型」「嫉妬型」「被害型」「身体型」の5つの分類に分けられ、初期症状として他人の言動や行動が1つ1つ気になる等が挙げられますが、妄想が酷くならないうちはある程度良好に日常生活を送れます。
発症する原因は何ですか?
- 家庭内、特に母親からの影響が大きく関与しているといわれ、幼少期から長期にわたって虐待や精神的ダメージを受けていると発症しやすい傾向にあります。
編集部まとめ

ここまで妄想性パーソナリティ障害の病態や症状・治療法等について紹介しました。
日常生活の中では誰しもがパーソナリティにある程度偏りがありますが、自覚していない妄想性パーソナリティ障害はその影響で一般の人よりも生きづらさを感じています。
妄想性パーソナリティ障害の人だけに言えることではありませんが、精神疾患を患っている人は患者自身が1番症状に対して悩み苦しんでいます。
そのため今回の妄想性パーソナリティ障害に関わらず、精神疾患に対しての基本的な知識や関わり方を知ることは自分を守るだけでなく手助けするためにも重要なことなのです。
相手に共感し理解しようとする姿勢を見せるだけでも、患者自身心が救われた気持ちになります。
どう接したら良いのか分からないからと突き放すのではなく、話を聞いて自分は相手のことを思っているということを伝える意識を持っていただければ、その思いは相手にも伝わります。
また自分自身が妄想性パーソナリティ障害かもしれない時には、専門機関のサポートを受けることで生きづらさが軽減されるかもしれません。
治療には長い時間と「良くなりたい」という強い意志が必要なので、困った時は誰かに相談しながら取り組んでいくことが大事になります。