「二分脊椎の合併症」はご存じですか?大人で起きる原因も医師が解説!
公開日:2025/12/24

二分脊椎は妊娠6週目の胎児が脊柱管の形成不良によって引き起こされる重い病気です。出生後に早急な手術を有するほど危険性の高いものから、出生時におしりから腰にかけての異常なくぼみ、毛髪組織、色素異常(母斑)により発見される場合まで様々です。
しかし胎児の長い人生に関わる大事な選択が迫られるからこそ、事前に診断方法や検査の仕方など適切な知識を身に着けておかなければなりません。
そこでこの記事では二分脊椎が発症する原因と進行した場合のリスクについて解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「二分脊椎」とは?症状・原因・成人してから発症する場合についても解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
目次 -INDEX-
二分脊椎を発症する原因とリスク

二分脊椎とはどのような病気ですか?
- 二分脊椎は背骨の空洞である脊柱管の形成が先天的に不完全で、脊髄馬尾神経が脊柱管の外に出てきてしまう病気です。一般的には胎児が発症し、腰のあたりに腫瘍が発生する開放性脊髄髄膜瘤と、外傷が見られない脊髄脂肪腫の2つに分かれます。
- 脊髄馬尾神経は腰のあたりに位置し、足の運動能力や排泄機能を司る重要な役割を担います。もし開放性脊髄髄膜瘤であった場合には、出産から24時間以内に神経管の閉鎖手術を行う必要があるほど緊急性の高いものです。
- 二分脊椎が原因で発症する症状は人によって大幅に異なるものの、神経の損傷が激しいと脊髄の他の神経にも影響を及ぼし、合併症に繋がってしまう危険性もあります。無事に手術が成功しても長期のリハビリが必須となるため、長期間慎重に向き合っていくものだと認識しておいてください。
二分脊椎を発症する原因を教えてください。
- 一番の原因は胎児の先天性疾患である「神経管閉鎖障害」です。
- 通常は妊娠6週間を目安に脊椎神経が収納されている神経管が閉鎖されますが、その過程で障害が発生すると脳や神経が正常に機能しなくなります。このとき神経管上部に影響が出ると脳が発達できず欠損する無脳症に、神経管下部の閉鎖が未完全だと二分脊椎が発症する仕組みです。
- 根本的に神経管閉鎖障害が発生する理由としては、遺伝的な欠陥や母体の葉酸欠乏が挙げられます。二分脊椎の発生の原因の1つとして、補酵素である葉酸不足が関与しています。妊娠前から0.4mg/日の葉酸サプリメントの摂取により、発生リスクは約半分に減らせると報告されています。
成人してから発症するケースもあると聞いたのですが…。
- 一般的に胎児が発症する先天的なものが取り上げられますが、過度な運動をきっかけに潜在的な二分脊椎を発症するケースもあります。
- これは激しい回旋運動を伴うラグビーや野球などのスポーツ選手が引き起こしやすいもので、腰に強い負荷がかかった状態が続くと「腰椎分離症」という疲労骨折に繋がります。この症状を一般的な腰痛だと見逃してしまうと次第に脊椎の損傷が激しくなり、二分脊椎を誘発してしまう恐れがあるのです。
二分脊椎が進行した場合にどのようなリスクが考えられますか?
- 二分脊椎は素早く対処しないと、命にも関わる重い合併症を引き起こすリスクが高まります。
- 併発しやすい症状のひとつが排泄機能に支障をきたす「神経因性膀胱」です。高熱や下痢・嘔吐などを引き起こす尿路感染症のリスクが非常に高まり、症状が重いと腎機能の低下まで懸念されます。
- また下肢の運動能力が大幅に低下することが知られています。最悪の場合背骨が曲がったり、下肢変形を起こしたりなど完治が困難な病に見舞われることがあるため、特に胎児には早急に治療を施してください。
- その他にも、脳や脊髄を流れる脳脊髄液を生産する脳室が拡大してしまう「水頭症」や、延髄機能に障害をきたす「キアリ奇形2型」との合併症も心配されます。
編集部まとめ

二分脊椎は主に胎児が発症するため、精神的な面でも負担の大きい病気です。
大規模な手術を受けても長期間のリハビリがあることから、心が晴れない日々が続くと考えられます。
しかし重要なのは「前向きに生きられるような好奇心を与え続けること」です。どんな時でも寄り添って、笑顔を絶やさないことを忘れないでください。
現代は治療方法や発症リスクが低減できる取り組みが確立されています。今回の内容を参考に、適切な知識を身に着けておきましょう。