手指の痺れが残る前に!「フォルクマン拘縮の予防法」を医師が解説!
公開日:2025/12/16

「フォルクマン拘縮」は、おもに腕の骨折などの外傷が原因で発症する合併症です。
発症してから早々に適切な処置を行わないと、屈筋群などの重要な筋肉が変性してしまいます。フォルクマン拘縮によって変性してしまうと治すことができません。
では、フォルクマン拘縮を起こさないようにするためにはどうすれば良いのでしょうか?また、フォルクマン拘縮が疑わしい場合はどのように検査するのでしょうか?
今回は恐ろしい合併症であるフォルクマン拘縮の予防方法と注意点について解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「フォルクマン拘縮」になると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
田中 栄(医師)
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東京大学医学部医学科卒業。その後、東京大学医学部附属病院整形外科研修医、Yale大学医学部整形外科留学、東京大学医学部附属病院整形外科助手、東京大学大学院医学系研究科外科学専攻整形外科学准教授、東京大学大学院医学系研究科外科学専攻整形外科学教授、東京大学医学部附属病院副院長を務める。2021年より東京大学医学部附属病院副院長、東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センター副センター長。
目次 -INDEX-
フォルクマン拘縮の予防方法と注意点

フォルクマン拘縮の予防方法を教えてください。
- もし前腕にケガをしてしまった際に激しい痛み・腫れがある場合は、早急に診察を受けてください。この時点ですでに血流が妨げられている場合、6時間から8時間が治療のリミットと言われています。
- また、予防には外傷の処置後も重要です。治療処置が終わった後にも激しい痛み・腫れがある場合はフォルクマン拘縮を疑わなければいけません。その際には躊躇せずもう一度医師の診察を受けるようにしてください。
- また、治療後腫れがなくとも前腕の圧迫によって症状が出ることがあります。ギブスや包帯で強く前腕を圧迫し続けることによっても引き起こされるため、たとえ固定が必要でも過度の圧迫はしないようにしましょう。
後遺症について教えてください。
- フォルクマン拘縮の後遺症は、主に神経障害や手指の関節の硬化です。手指の関節の硬化は、筋肉の壊死によって起こります。手指につながる筋肉が変性・硬化し、曲がったまま伸ばせなくなり可動域制限がかかってしまいます。
- 一度筋肉や神経が壊死して変性が始まると元には戻りません。手術を行うことで多少の改善がみられる場合はありますが、完全に機能を取り戻すことは難しいです。
- 神経障害はおもに痺れ・感覚麻痺などの症状です。手指の感覚がなくなることもあります。これも血流がなくなることによって神経が壊死し起こる症状です。
家族や周りが注意すべきポイントを教えてください。
- まず前腕部の外傷を負った場合にはできるだけ経過を見て、見た目から激しい腫れがある場合には必ず診察を受けさせるようにしてください。また、前腕部の外傷の治療後にも予後を見て、明らかに腫れがある場合は同じく診察を促すようにしましょう。
- 療養中は包帯を巻き直す場合や就寝時の腕の位置にも気を使うようにしてください。外傷を負った部位をきつく圧迫しすぎてしまうと、フォルクマン拘縮のリスクが高まります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
- フォルクマン拘縮は重篤な障害を残す可能性のあるかなり重い合併症です。急性期を過ぎて慢性期になると、治療が不可能になります。症状が進行してしまうと手指の機能は元に戻りません。そのため、特に子供の前腕部や肘の骨折の際には気を配る必要があります。成人であっても前腕の圧迫には注意が必要です。前腕部に腫れを伴う外傷を負った場合には必ず医師の診察を受けてください。
編集部まとめ

フォルクマン拘縮は前腕部や肘の骨折などの外傷によって引き起こされる重篤な合併症です。ただし、初期症状のうちに処置できれば重篤な障害は残りません。
主な原因は骨や筋肉のずれによる血流阻害です。症状が進行してしまうと筋肉や神経が壊死してしまいます。手指の機能障害が残り、根本的な治療が困難となります。
そのため、外傷を負った後に患部の腫れや痛みを伴う場合は、必ず医師の診察や処置を受けなければいけません。初期症状のうちに処置ができれば、重い障害は残りません。
フォルクマン拘縮は引き起こされても症状を進行させないことが可能です。外傷の治療中も医師の指導のもと安静にするようにしましょう。