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“吐き気や腹痛”は希少がん「GIST」のサイン?気づくのが難しい理由も医師が解説!

 公開日:2025/12/23
“吐き気や腹痛”は希少がん「GIST」のサイン?気づくのが難しい理由も医師が解説!

消化器官に悪性腫瘍ができる病気の中でも非常にまれなのが「GIST(ジスト:Gastrointestinal Stromal Tumor)」です。

消化器官にできる「肉腫」のひとつで、がんに比べて発生頻度はかなり低い病気です。

GISTはしばしば胃がん・大腸がん・小腸がんなどの消化器官系のがんと混同されがちですが、がんとは違う病気と分類されています。

ここではGISTと消化器系のがんは何が違うのか、特徴などを詳しく紹介します。

※この記事はメディカルドックにて『「GIST」とは?がんとの違い・症状・治療法も併せて解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

GISTの特徴

女性の骨盤周り

GISTとはどんな病気ですか?

  • GISTは、「Gastrointestinal stromal tumor(=消化管間質腫瘍)」のことで、消化器官にできる悪性腫瘍の中でも「肉腫」に分類される腫瘍です。
  • 肉腫とは、皮膚や粘膜などにできる通常の腫瘍とは違い、骨や血管、筋肉にできる悪性腫瘍のことを呼びます。発生部位のせいで見つけにくいことがほとんどです。
  • 悪性腫瘍が肉腫と診断されることは、成人が発症する悪性腫瘍(がん)の1%ほどとかなりまれな腫瘍です。
  • そのため、胃がん・大腸がんなどの消化器官にできるがんとは違う病気として分類されます。しかし、がんと同様に転移することもあります。
  • がんと比べるとGISTの発生頻度は10万人に1~2人程度とかなり少ないのが特徴です。

GISTとがんはどのように違うのでしょうか?

  • 胃がんなどの消化器官にできる悪性腫瘍は「上皮性悪性腫瘍」と言われ、多くが消化器官の粘膜に発現するのが特徴です。
  • 一方、消化器官の粘膜の下にある筋肉層から発生する悪性腫瘍がGISTと診断されます。
  • がんと似た性質や症状を発現しますが、発生部位が明らかに違うのが特徴です。

発症の原因を教えてください。

  • GISTが発現する消化器官の粘膜の下にある筋肉層には「カハール介在細胞」という細胞があります。この細胞は消化器官の筋肉の動きを一定に保つ働きをしています。
  • このカハール介在細胞の元となる前駆細胞が異常増殖し腫瘍になることがGIST発症の原因です。ただし、腫瘍化することは非常にまれです。
  • 細胞膜にあるタンパク質の異常が主な原因といわれています。このタンパク質は通常時、特定の物質から刺激を受けたときにだけ細胞の増殖を始めます。
  • しかし、異常な状態になると刺激がない状態でも増殖し続けてしまうのです。
  • これが放置されると、検査してもわかるほどの腫瘍へと成長していくというのが腫瘍化へのメカニズムです。

どのような症状が起こりますか?

  • GISTは自覚症状の少ない悪性腫瘍といわれています。主な症状は吐き気・貧血・腹痛です。粘膜より下にできる腫瘍なので、出血はあまりみられないのが特徴です。
  • しかし、症状がさまざまな他の病気と見分けがつきません。
  • いずれも腫瘍がある程度成長してから起こる症状です。ある程度大きくならないと検査でもわからないため、放置してしまい発見が遅れることが多い悪性腫瘍でもあります。

GISTの初期症状を教えてください。

  • 初期症状といわれるほどの症状はほとんどありません。腫瘍がある程度成長してから症状が出ることが多く、そのほとんどが他の病気でもみられる症状です。
  • 胃にできた場合は、胃カメラや内視鏡検査などのがん検診で無症状のGISTが見つかる場合があります。
  • 欧米諸国ではあまり胃カメラ検査などが活発に行われていないため、症状がある程度進行してから見つかることがほとんどです。
  • 日本での症例は、定期的な検診で腫瘍が見つかることで初めてわかるケースも多いです。

編集部まとめ

健康診断

GISTは非常にまれな悪性腫瘍です。がんとは違って消化器官の深いところにできるため、発見が遅れる場合があります。

自覚症状も他の病気と同じ症状が多いため、気がついたときには腫瘍が成長していたことも多い厄介な病気です。

また、その特徴から胃がんや大腸がんなどの消化器系のがんと診断されてしまうことがあります。

切除手術後の組織検査でわかる場合もあるため、最初はGISTと診断されないことも多いです。

ただし、がんとは違い周辺組織のがん化が少ないのが特徴です。手術は部分切除など比較的軽いものが多くなります。

再発可能性は通常の消化器官系のがんよりも少ないですが、再発予防として化学療法が行われるのが一般的です。

発生部位は胃がんなど一般的な消化器官系のがんと同じ場合がほとんどです。検診などで見つかる場合もあるので、がん検診は定期的に受けるようにしましょう。

この記事の監修医師