日本人に多い「ウェルナー 症候群」はどんな特徴の人に多い?医師が解説!
公開日:2025/12/13

ウェルナー症候群は、実年齢に見合わない老化現象がみられる早老症の1つです。
難病に指定されている病気ですが、稀な病気でもあるためどんな病気なのか知らない方も少なくないでしょう。
この病気は早期発見が重要となる病気です。そのためにも、どんな病気か理解しておくことが大切です。
ウェルナー症候群の症状などについて解説いたします。
※この記事はMedical DOCにて『「ウェルナー 症候群」とは?症状・原因・治療方法も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。
ウェルナー症候群の症状と原因

ウェルナー症候群とはどんな病気でしょうか?
- ウェルナー症候群は、指定難病にも指定されている稀な病気です。オットー・ウェルナーというドイツの医師によって初めて報告されました。
- 思春期を過ぎた頃から急速に老化が進んでいくようにみえるため、早く老いる病気である早老症の1つといわれています。
- 具体的には、思春期を過ぎた20歳頃から白髪・脱毛・白内障・手足の筋肉が痩せるなどの加齢に伴う変化が見られ、実年齢より著しく老けてみえるようになります。
- この病気は見た目の変化がみられるだけではなく、糖尿病・脂質異常症などの体内の異常も多いです。そのため、かつては40代で悪性腫瘍(がん)・心筋梗塞などにより亡くなる方が多い傾向にありました。現在は、医学の進歩とともに50~60代の患者さんも増えています。
- ただし、難治性皮膚潰瘍に伴う下肢切断・悪性腫瘍・糖尿病などのために、死に至ることはなくとも重篤な後遺症に苦しんでいる患者さんは少なくありません。
どのような人が発症しますか?
- ウェルナー症候群の原因は、WRN遺伝子の異常によるものと考えられています。
- WRN遺伝子は、DNAが傷ついたときに修復したり正常な状態を保持したりと、重要な働きを担っている遺伝子です。この遺伝子に異常が生じると正常な状態を保てなくなり、DNAに傷が入りやすくなります。
- しかし、遺伝子の異常がなぜ早い老化現象につながるのかはまだはっきりと解明されていません。ウェルナー症候群の患者さんは、日本国内には約2,000~3,000人いると報告されています。
- 世界中の患者さんのなかでも約60%が日本人であり、日本人に多い早老症です。以前は発症の原因として、血縁が濃くなる近親婚が影響しているのではとも考えられていました。
- しかし、近年は近親婚に関係のない方でも発病しているため、因果関係は解明されていません。
- また、患者さんの傾向として身長が低い方に多い病気ですが、食生活や運動などの生活習慣は関係ないと考えられています。
- 現在は遺伝子の異常によって発症する可能性があることしか解明されていない病気です。
症状を教えてください。
- ウェルナー症候群の主な症状は、20歳頃から早い老化現象がみられることです。
- 白髪・脱毛などの毛髪の変化
- 両目の白内障
- 声がかん高くかすれる
- 手足の筋肉が痩せる
- 傷が治りにくくなる(難治性皮膚潰瘍)
- 皮膚の萎縮や角化
- アキレス腱・皮下の石灰化
- このような老化現象に似ている症状が、まだ若い年齢にも関わらずあらわれるようになります。
- 発症すると、糖尿病・脂質異常症になる場合が多く、更年期も早い年齢から起こりやすいです。
- 以前は悪性腫瘍・心筋梗塞などが原因で40代で亡くなる方が多い傾向にありましたが、近年は60代まで元気に過ごしている方もいます。
他の早老症とどう違うのでしょうか?
- 早老症には、およそ10の病気があります。どの早老症も、実年齢より早く老化現象がみられることは共通しています。
- ウェルナー症候群をはじめとする早老症は、遺伝子の異常が原因で起こる病気です。症状も比較的共通しており、大きな違いは原因となる遺伝子が異なる点です。
- ウェルナー症候群:WRN遺伝子
- ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群:ラミンA遺伝子
- コケイン症候群:CSA遺伝子
- ブルーム症候群:BLMヘリカーゼ
- 早老症の中でも日本人に多くみられる病気がウェルナー症候群です。他の早老症に関しては日本人の報告例が非常に少なく、日本での実態は明らかになっていません。
編集部まとめ

難病にも指定されているウェルナー症候群は、日本人に多い早老症といわれています。
合併症によって死に至る可能性もある病気ですし、見た目がどんどん老けてしまう病気は誰だって避けたいものです。
しかし、原因は遺伝子の異常であり、生活習慣によって発症の対策・予防ができるわけではありません。
だからこそ、少しでもおかしいなと思ったら早めに診察を受け、病気に気付くことが重要です。
万が一自分や周囲の方に疑いがみられる際に適切に対応できるよう、ウェルナー症候群をはじめとする難病に対する理解を深めていきましょう。