難病「多発性筋炎の治療法」はご存知ですか?日常生活の注意点も医師が解説!
公開日:2025/11/22

多発性筋炎とは、筋肉に炎症がおこる病気で国が指定する難病の1つです。筋肉に炎症が起きるだけでなく、力が入らなくなるなどの症状が生じます。
自己免疫疾患の1つであり、乳幼児から老人まで幅広い年代で発症の可能性がある恐ろしい病気です。
本記事では、多発性筋炎の予後と治療方法について解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
※この記事はメディカルドックにて『「多発性筋炎」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
多発性筋炎の予後と治療方法

治療方法を教えてください。
- 基本的な治療方法としては、まず内服ステロイド剤を投与します。症状の進行状況などを診ながら少しずつステロイド剤の量は減らしていきます。
- しかし、重症化している場合や進行が止まらない場合は、大量のステロイド剤を点滴するなどのパルス療法を用いることもあるでしょう。
- ステロイド剤で改善が見られない場合・副作用により投与量を減らしたい場合は、免疫抑制剤や免疫グロブリンの併用を行うケースもあります。
- 免疫抑制剤とは、免疫機能を抑える薬です。免疫グロブリンは免疫を調整する薬です。
- さらに、治療の経過を診ながら、リハビリテーションも同時に行っていきます。著しい筋肉低下を防ぐためです。
- 皮膚炎の症状に対しては、外用薬としてステロイド剤を用いることが多いです。また、その他の合併症を引き起こす場合は、それに応じた治療を進めます。
多発性筋炎は治りますか?
- 多発性筋炎は完治は難しい病気です。しかし、適切な治療を続けていれば、約7割~8割の患者は状態が治まるといわれています。
- 合併症が発症せずに状態が良ければ、ステロイド剤や免疫抑制剤を使用しないで経過観察することも不可能ではありません。
- このような状態になるまでは、早い方であれば約2年ほど移行することも可能です。
日常生活で気をつけることはありますか?
- ステロイド剤や免疫抑制剤を使わなくて良い状態になるまでの過程で、糖尿病や骨粗しょう症などになりやすい患者の場合は、これらの病気にかからないように注意が必要です。
- 特にステロイド剤の効果で、糖尿病の症状が現れることがあります。食生活にも注意を払う必要があるでしょう。
- また、飲み込む力が弱くなっている方は誤嚥の危険もあります。その結果、肺炎に繋がるケースもあるため飲食時にも注意が必要です。
- また、筋炎を治療するとはいっても、全く運動をしてはいけないということではありません。適度な運動を行わないと、筋肉がやせてしまい骨がもろくなる可能性もあります。
- 医師との相談のもと、適切な量の運動を行いましょう。治療後は、合併症の危険もあるため、悪性腫瘍への注意も必要です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
- 多発性筋炎は、初期症状では運動機能の低下などが見られますが、放置しておくと日常生活に著しく影響を与えるほど悪化する可能性があります。
- 筋炎だけでなく皮膚炎を同時に引き起こすケースや、合併症を起こす可能性もあるため油断できない病気です。
- しかし、適切な治療を行えば、普段の生活と同様のレベルまで回復することは不可能ではありません。万が一、多発性筋炎と同様の症状など違和感を感じるようであれば、医療機関に相談しましょう。
編集部まとめ

多発性筋炎とは、筋肉に炎症がおき、倦怠感や誤嚥など日常生活に大きく影響を与えるほど恐ろしい病気です。
しかし、ステロイド剤や免疫抑制剤など適切な投薬や治療を行うことで、良好な状態にすることは可能です。
合併症などの危険もあるため、治療中・治療後も注意が必要ですが、普段の生活と変わらない状態に戻ることも不可能ではありません。
多発性筋炎の症状や治療方法など正しい情報を把握して、万が一症状があった場合には、医師に相談のもと治療を進めましょう。