”尿意が我慢できない”のは「尿崩症」のサイン?発症後の注意点も医師が解説!
公開日:2025/12/19

尿崩症(にょうほうしょう)とは、下垂体機能や腎臓などの働きが悪くなるために起こる病気です。尿の量が増加し、水分が失われるなどの影響が出る恐ろしい病気です。
突然変異によって誰しもかかる可能性のある病気のため、正しく症状や治療方法を把握しておくことは大変重要となります。
そこで本記事では、尿崩症の治療方法などをご紹介します。
※この記事はメディカルドックにて『「尿崩症」とは?症状・原因・治療法も解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
目次 -INDEX-
尿崩症の治療方法や予防方法

尿崩症は治りますか?
- 尿崩症は治療を進めることはできますが、根治させることは非常に難しいです。
- そのため、継続的な薬の投与が必要となります。
- 軽度の症状であれば、抗利尿ホルモン剤によってある程度尿量を減少させることが可能です。
尿崩症の治療について教えてください。
- 尿崩症が軽度の場合は、外部から抗利尿ホルモンを投与することで尿量を調整します。
- しかし、ホルモンの投与だけでは尿量を調整できない場合には、増加した尿を減らすためにデスモプレシンという薬を使用します。
- 鼻腔スプレーや錠剤などで摂取する方法があり、抗利尿ホルモン同様に尿量を減少させる効果があるのです。
- また、サイアザイド系の利尿薬が使用されることもあります。抗利尿ホルモンの生成を促す効果があり、薬によって尿量などの制御が可能となる場合があります。
尿崩症のセルフチェック法を教えてください。
- 尿崩症のセルフチェック方法としては、次のような症状に心当たりがあるかを確認しましょう。
- 尿が我慢できないと感じて、急いでトイレに行くことがある
- 尿の回数が増加した
- 尿のために夜起きてしまい困る
- 体がだるい
- 認知症と診断されたことがある
- これらの症状に悩んでいるということであれば、念のため医療機関を受診しましょう。
発症後の注意点や予防方法が知りたいです。
- 発症後の注意点としては、薬の効果が切れる時間を確保することです。
- デスモプレシン等の薬を投与している場合、必要以上に使用すると体に水分がたまって水中毒を引き起こす可能性があります。水中毒で引き起こす症状としては、低ナトリウム血症を生じ、頭痛・嘔吐・倦怠感を感じるなどです。
- これらの中毒症状を回避するには、薬の効果が切れる時間を確保することが重要です。効果が切れると尿量が増加するので、尿意を感じたらできるだけ速やかに排尿しましょう。
- この時に尿意を我慢すると、尿が膀胱にたまる状態が続くため、膀胱機能の低下や尿路感染症を引き起こす場合があります。
- また、薬の効果があるからといって、自分の判断で投与をやめることがないようにしましょう。
- また、中枢性尿崩症の場合、まれにのどの渇きを感じる感覚に障害があるケースがあります。その場合、体が水分不足状態にも関わらず、渇きを感じないため水分を摂取しません。著しい脱水状態となる危険性があるため、注意が必要です。
最後に、読者へメッセージがあればお願いします。
- 尿崩症は、尿の量が多くなるだけでなく、のどの渇きや大量の水分摂取などを引き起こす大変な病気です。
- これらの症状から、脱水症状や他の症状を併発する可能性があります。少しでも排尿の異変を感じたら、医療機関に相談してみましょう。
- 根治は難しい病気ですが、薬を投与することで尿量を調整することは可能です。その際の注意点などをしっかりと把握して、できるだけ普段の生活と同じ生活が送れるように対応していきましょう。
編集部まとめ

尿崩症は、尿の量が増えてしまう病気です。それだけを聞くとあまり恐ろしい病気とは感じない人も多いかもしれません。
しかし、体内で排尿のためのメカニズムが失われている恐ろしい病気です。
体内の水分に影響を及ぼすため、併発する症状も大きく、万が一発症した場合には薬が欠かせない病気となります。
本疾患は根治が難しいながらも、投薬によって調整することは不可能ではありませんので、少しでも症状に思い当たる場合や、不安を感じている場合には代謝内分泌内科など専門医療機関に相談して適切な治療を行いましょう。