「エムポックスを予防する5つの方法」はご存知ですか?重症化のリスクも医師が解説!
公開日:2025/12/08

世界各地での流行が確認されているエムポックスは、ウイルス感染によって起きる発疹性疾患です。
日本ではあまり馴染みのない病気であるため、エムポックスに不安や恐怖を感じている人も少なくないかもしれません。
しかし、エムポックスは致死率が低く治る病気です。
多くの人が気になるエムポックスの予防方法についてお伝えいたします。
※この記事はメディカルドックにて『「サル痘(とう)」の症状・致死率・感染経路はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
目次 -INDEX-
エムポックスの予防と注意点

エムポックスを予防する方法を教えてください。
- エムポックスに感染しないためには、エムポックスの流行地での動物との接触を避けることが大切です。エムポックスの感染例が確認されている国に行く際は、手洗いを徹底する・むやみに動物に触らない・むやみに動物に近付かない、これらを徹底しましょう。
- また、人から人への感染例は少ないですが、感染例がないわけではありません。感染者との接触を避けることも重要です。エムポックス感染者が使用したリネン類から感染した報告例もあります。感染者が使用したリネン類や衣類は直接的な接触を避けて、洗濯・消毒・手洗いを行いましょう。
- また、天然痘のワクチンである痘そうワクチンがエムポックス予防にも有効です。痘そうワクチン接種によって、約85%発症予防効果があるとされています。エムポックスウイルス曝露後4日以内に痘そうワクチンを接種することで感染予防効果があり、曝露後4~14日の間にワクチン接種した場合は重症化予防効果があると考えられています。
- しかし、日本では痘そうワクチン接種は行われていないため、エムポックスの予防としてのワクチン接種の適用はありません。一方で、2022年以降エムポックスウイルス曝露の可能性がある人に対してのワクチン投与の臨床研究体制の整備が進められています。まずは、感染が疑われる動物・感染者との接触を控えることが最大の予防といえます。
エムポックスは完治までにどのくらいかかりますか?
- エムポックスは、発症から約2~4週間で自然に治る病気です。一般的に長くても1ヶ月程で完治します。
- しかし、重症化したり死に至るケースも確認されています。ウイルス曝露の程度・健康状態・合併症などにより重症化する可能性も0ではありません。
- 合併症が生じた場合は、完治までに一般的な回復期間よりも症状が長引き、完治までに1ヶ月以上かかる場合も考えられます。
重症化のリスクもあるのですね...。
- エムポックスは致死率が低く、感染によって死に直結する病気ではありません。しかし、重症化のリスクは0ではなく、稀に重症化するケースもあります。特に小児・妊婦の重症化リスクが高い傾向です。
- エムポックスによる死亡例も確認されていますが、先進国での死亡例は報告されていません。重症化のリスクはもちろんありますが、必要以上に恐れる病気ではありません。
最後に、読者にメッセージがあればお願いします。
- エムポックスは、エムポックスウイルスの感染による急性発疹性疾患です。主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しており、アメリカの疾病対策センターによると、2022年7月現在では、エムポックスが定着していない52の国や地域で約6000人弱の感染者が確認されています。
- WHO(世界保健機関)のヨーロッパ地域では31の国と地域で4500人以上の感染が確認されており、ヨーロッパでの感染者の増加が目立ちます。
- エムポックスの病原体は、エムポックスウイルスで、ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属に分類されています。主な症状は発熱と発疹で、多くの場合は2〜4週間ほどで自然に回復します。
- 発症してから時間が経つと共に特徴的な皮膚症状が認められます。皮膚病変は赤い紅斑から始まり、数日から1週間ほどで盛り上がって徐々に1cm程度の水疱や膿を伴った後に、かさぶた(痂皮)で皮膚病変が覆われます。
- 臨床経過としては、発熱、頭痛、リンパ節腫脹などを中心とした症状が5日程度持続して、発熱症状が出現してから数日後に発疹が出現します。リンパ節腫脹は顎下、頸部、鼠径部などを中心に認められます。
- また、エムポックスでは皮疹は顔面や四肢、手掌や足底部にも出現することがあり、皮疹そのものは徐々に隆起して水疱、膿疱、痂皮と変化していくことが知られています。エムポックスウイルスの感染源や感染経路については、ウイルス感染した動物に噛まれる、あるいは血液や発疹などと強固に接触することによって二次感染が引き起こされると指摘されています。
- エムポックスウイルスに特異的な治療薬は存在せず、発熱や発疹、疼痛症状に対しての対症的な治療法が中心となります。欧州においては、特異的な治療薬として「テコビリマット」が承認されていますが、我が国ではいまだ承認されておらず現時点で同薬を用いた臨床研究が実施されている段階です。
編集部まとめ

突然の世界的流行が発生したエムポックス。まだ分からないことも多く、未知の病として不安や恐怖を感じている人はきっと多いはずです。
しかし、多くの場合は自然治癒で治る病気ですし、理解を深めることで差別や偏見といった先入観を捨てて向き合える病気です。
また、国内では感染予防目的のワクチン接種は実施していませんが、感染予防のためにできることはたくさんあります。
手洗い・咳エチケットマナーなどを徹底した上で、流行地に渡航する際は動物・人との接触に注意しましょう。
先入観や理解不足から、エムポックスに対する偏見・差別も懸念されています。
エムポックスがどんな病気なのかしっかり理解し感染予防していくと共に、病気に対する偏見・差別もなくしていきましょう。