難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療法」はご存じですか?医師が解説!
公開日:2025/11/30

「筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)」はALS(amyotrophic lateral sclerosis)とも呼ばれます。
国の指定難病で、発症の原因は不明です。人工呼吸器を使わない場合、発症から2〜5年で死に至ります。
とても進行の早い病気ながら診断されるまで1年以上かかる場合がほとんどで、早期発見が難しいのが現状です。
筋萎縮性側索硬化症を疑ったほうがいい初期症状や兆候、治療法などを詳しくみていきましょう。

監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
目次 -INDEX-
筋萎縮性側索硬化症の治療法とは?

筋萎縮性側索硬化症の治療法を教えてください。
- 今のところ、根本的な治療方法はありません。病気の進行を遅らせるための治療がメインとなり、症状に合わせて「投薬療法」と「対症療法」を行います。
- 投薬療法:進行を遅らせる作用のある飲み薬「リルゾール」や点滴注射薬「エダラボン」を使用します。
- 対症療法:筋力低下や体の痛みを抑えるため、理学療法のリハビリテーションを行います。
- 体が思うように動かないストレスや病気に対する不安によって睡眠障害を起こした場合、睡眠薬や抗不安剤が処方されます。病気が進行すると患者のQOL(生活の質)を維持するためにさまざまな処置が行われます。
- 会話以外の新たなコミュニケーション手段を検討する
- 食事を飲み込みやすいように工夫する
- 嚥下障害が進行した場合は胃に直接栄養を注入する「胃ろう」や鼻から管を入れて流動食を補給する「経鼻胃管」、点滴での栄養補給の処置なども行います。
- 呼吸不全が進行した場合は人工呼吸器が導入されます。鼻マスクによる「非侵襲的陽圧換気」と「気管切開下陽圧換気」の2種類ありますが、気管切開をした場合は人工呼吸器を取り外すことができません。
筋萎縮性側索硬化症の治療にはどのような効果があるのですか?
- 治療で使われるリルゾールはグルタミン酸の興奮毒素を抑える効果があります。服薬することで気管切開や人工呼吸器の利用を開始するまでを2〜3か月遅らせることができます。
- 投薬療法や対症療法を行ったとしても、筋力や運動機能を回復させる効果はありません。しかし、患者の体の痛みや疲労、筋力の低下を防ぎ、おだやかに日常生活を送るためには治療が必要です。
治療中に心掛けることなどあれば教えてください。
- 患者本人が日常生活を送るうえで困っていることや支障があることをよく観察してみましょう。
- 筋萎縮性側索硬化症の患者は運動機能に問題が起きているだけで、思考や感情、記憶力は発症前と同じです。自由に動けなくなってかわいそうだというような同情的な態度で接するのではなく、以前と同じ接し方を心がけてください。過度に優しく対応することで患者を傷つけてしまう場合もあります。
最後に、読者へメッセージがあればお願いします。
- 筋萎縮性側索硬化症は一度発症すると症状が軽くなったり回復したりすることはありません。体のどの部分から筋肉の衰えが始まったとしても、やがては全身に広がり最終的には呼吸筋が衰えて呼吸不全になります。
- 呼吸不全に至るまでの期間は個人差が大きく、人工呼吸器を使わずにゆっくりと10年以上にわたって進行する例もありますが、1年で呼吸不全になる例もあります。
- 筋力の低下など疑わしい症状がある場合は早期に検査して診断を受けましょう。投薬療法を早く始めることで病気の進行を遅らせることができます。
編集部まとめ

筋萎縮性側索硬化症は原因不明の難病で、今のところ治療法がありません。発症すると2年〜5年で死に至ることが多く、とても進行が早い病気です。
症状や進行速度は個人差が大きいですが、最終的には全身に広がり体を動かせなくなります。
根本的な治療方法はありませんが、早期に発見して投薬治療を開始することで病気の進行を遅らせることができます。
体が動かしにくかったりろれつが回らなかったりなど、筋萎縮性側索硬化症を疑う症状がある場合は早めに受診しましょう。