「低酸素脳症の治療法」はまず体をどうするかご存じですか?医師が解説!

後遺症が残る病気には、さまざまなものがあります。低酸素脳症もその1つです。発症すると脳が損傷してしまい、脳の機能が低下してしまいます。
脳が深刻なダメージを受けた場合には、日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。場合によっては、昏睡状態が続くこともあります。
また低酸素脳症は発症した本人だけでなく、周囲の方にも、日常生活のケアが増えるなどの疾患の1つです。
今回は低酸素脳症の治療方法について解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「低酸素脳症」とは?症状や兆候・原因についても解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
目次 -INDEX-
低酸素脳症の治療方法とは

低酸素脳症の治療内容を教えてください。
- まず心停止が起こったときなどに、よく用いられる治療が低体温療法です。この治療法は、主に脳を保護する目的で行われます。 心筋梗塞などにより心臓が止まると脳に酸素が届きません。酸素不足の状態が続くと、脳がダメージを受けてしまいます。脳へのダメージを抑えるには、脳が必要とする酸素量を減らすことが有効です。体温を低下させることで脳の代謝を抑え、必要な酸素量を減らせます。このように、低酸素脳症を防ぐ目的で行われるのが低体温療法です。実際に後遺症が残らなかった事例も複数報告されています。
- ただし低体温療法は、科学的根拠が明確になっているわけではありません。そのため、現在でも研究が進められています。
- 応急的な治療が終わったあとは、血圧や呼吸などの管理・観察が必要です。また脳浮腫などが見つかった場合には、脳圧を下げる治療が行われます。
- なお体に麻痺や痺れなどがある場合は、リハビリテーションなどが必要です。リハビリテーションを継続して行うことで、症状が改善されることがあります。
低酸素脳症は完治するものですか?
- 現状では脳に関する今後の予測を行うのは、難しいとされています。
- しかし、必ずしも回復しないというわけではありません。 近年では研究が進んでおり、脳は時間が経つにつれ回復することが分かっています。実際に長期間の治療やリハビリテーションに励み、症状が改善された方もいます。そのため昏睡状態であったとしても、あきらめないことが大切です。
- 特に若年層や小児の方の場合には、高齢者と比べて脳機能の改善が期待できるとされています。
低酸素脳症を予防する方法はありますか?
- 低酸素脳症は、心筋梗塞などが原因で起こる症状です。そのため心筋梗塞などの予防に努めることで、発症するリスクを抑えられます。心筋梗塞は肥満やストレス、喫煙などの生活習慣も要因となる病気です。低酸素脳症になるリスクを減らすためにも、バランスの良い食事や適度な運動を心掛ける必要があります。
- また低酸素脳症は、窒息も原因の1つです。特に幼児がいる場合には、誤飲などに注意する必要があります。生後6ヶ月あたりから、物を口に入れる行動を始めるとされています。誤飲を防ぐためにも飲み込む危険性のある物は、子どもが手の届かない所に置くことが大切です。
- なお心停止の方を目撃した際には、救急車を呼ぶとともに心臓マッサージを行う必要があります。心臓マッサージは心拍の再開だけでなく、脳に酸素を送り低酸素脳症を防ぐことにも有効です。
最後に、読者へメッセージがあればお願いします。
- 低酸素脳症で脳が損傷を受けると記憶障害や怒りっぽくなるなど、今までにはない行動がみられる場合があります。このような症状を高次脳機能障害といいます。症状は個人によって異なりますが、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
- しかしちょっとした工夫を行うことで、日常生活での支障を減らせます。例えば忘れっぽくなったと感じたときは、メモを取るなどが効果的です。
- 症状によって有効な対処法は異なりますが、自分に合った対処法を見つけることで、日々の生活が送りやすくなります。
編集部まとめ

低酸素脳症は後遺症が残ることも多く、重い障害が生じた際には社会復帰も容易ではありません。
発症した本人も生活にストレスを感じていることも多いため、家族をはじめとする周囲のサポートが必要です。
周囲の方ができるサポートとしては身体的な支援をはじめ、物忘れをしているときの声かけなどが挙げられます。
またイライラするなどの症状が見られたときは、対象となるものから引き離すことも有効です。
なお近年では、都道府県や医療機関が高次脳機能障害などへの支援を行っています。相談窓口も設けられているため、負担が大きいと感じたときは活用してみましょう。
低酸素脳症が疑われる場合には、身体障害として認定される場合があります。機能回復など日常生活をサポートするためにも、リハビリなどが医療とあわせて重要となります。
身体障害や障害年金などの手続きも重要でありますので、診断がおりましたら、お住まいの地域役所にお問い合わせください。