「心不全」を悪化させる“塩分の落とし穴”とは? 外食・コンビニ食が多い人は要注意

心不全の患者は、水分や塩分を摂りすぎないよう注意されますが、一体なぜ気をつけなければいけないのでしょうか。今回は、心不全の悪化を防ぐための減塩のコツについて、「おくやまクリニック」の奥山先生に解説していただきました。

監修医師:
奥山 裕司(おくやまクリニック)
編集部
減塩するためには、どのようなことを意識すればいいでしょうか?
奥山先生
まず、外食やコンビニのお弁当などを多く利用している場合には食生活を改め、できるだけ自炊するようにしましょう。とはいえ、コンビニや市販のお弁当に頼らざるを得ない人もいると思います。その場合には、成分表示を確認する習慣をつけてみてください。最近のお弁当は、塩分の含有量がきちんと表示されているものも多いので、そうした数値を参考にするといいでしょう。
編集部
外で食べ物を購入するときに、栄養素を意識することが重要なのですね。
奥山先生
はい。例えば、ファミリーレストランのメニューにも塩分の表示があると思いますが、まず食べて味を感じてください。「これくらいの味付けだと、塩分はこれくらいなのか」と実感することで、だいたいの塩分量を感覚的に身につけることができるでしょう。
編集部
そのほか、気をつけることはありますか?
奥山先生
ソーセージ・ハム・練り物などの「加工食品」にも、多くの塩分が含まれています。また、パンや麺類などの主食に含まれる塩分も無視できません。こうした食品の過剰摂取にも気をつけましょう。
編集部
普段の調理で塩分を減らすためには、どのようなことを工夫すればいいのでしょうか?
奥山先生
調理の際、酸味や香辛料、出汁などを上手に活用すると、塩分が少なくても物足りないと感じにくいと思います。また、野菜や果物に含まれている「カリウム」は、体内に蓄積された塩分の排出を促す作用があります。こうした食品を多く摂るようにしましょう。
編集部
日々の小さな積み重ねが大事なのですね。
奥山先生
そのとおりです。患者さんには、「量は少なくてもいいので塩分のピリッときいた料理を1品、食卓に並べるといいですよ」ということをお話ししています。全てのおかずを薄味にしてしまうと、どうしても物足りなく感じてしまうでしょう。しかし、量は少なくても何か1品、味付けのしっかりしたものがあると食事全体の満足度が高まります。食事療法は毎日継続することが必要なので、我慢したり無理したりすることなく、続けられる方法を考えてみましょう。
編集部
水分の摂取量については、どれくらいを目安にすればいいのでしょうか?
奥山先生
心臓の状態にもよりますが、推奨されている飲水量は1日1.2〜1.5Lです。ただし、心不全の状態にもよるので医師に確認しておきましょう。また、心不全が重症の人など、心臓の機能が著しく低下している場合は、さらに厳密な制限が課される場合があります。
編集部
水分の摂取量は、体調や季節によっても変わりそうです。
奥山先生
たしかに、夏はどうしても発汗量が増えますし、反対に冬は減ります。そうした変化は生理的なものですが、まずは推奨される飲水量を飲んでみて、毎日の体重が大きく増えないかどうかを意識してみてください。もし体重が増えたら、自分にとっては飲水量が多いということなので、少し減らしてみましょう。
編集部
体重を測ることも大事ですね。
奥山先生
はい。一般的に、心不全は高齢者が多いのですが、その年代の患者さんには「体重が1週間で1kg増えたらそれは太っているのではなくて、水が溜まっているということです。早めに医療機関を受診してください」とお話ししています。このように、毎日自分の体調に気をつけるという意識が心不全のコントロールには必要です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
奥山先生
医療機関では、尿検査によって1日の塩分摂取量を推定することができます。心不全と診断された人は、定期的にその検査を受けながら塩分を摂りすぎていないか確認することをおすすめします。「自分では塩分摂取を減らしているつもりだけど、全然足りていなかった」とわかれば、もう少し努力が必要になりますし、反対に「頑張って塩分を制限したら、検査結果が改善していた」というようなら、ますますモチベーションが高まります。ときどき定量的な検査をしながら、心不全のコントロールに努めていただければと思います。
※この記事はMedical DOCにて<「心不全」を悪化させる“9つの原因”はご存じですか? 水分・塩分制限が必要な理由も医師が解説!>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。