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「不育症」の診断基準はご存じですか? 4つの原因・不妊症との違いも医師が解説!

 公開日:2025/03/17
妊娠しても流産を繰り返してしまう不育症の定義とは? 症状や原因についても知りたい

現在でも、まだわかっていないことが多い不育症。そのため、治療を進めるなかで悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。一体、不育症の症状や原因とは? まつみレディースクリニック三田の松見先生に聞きました。

松見 泰宇

監修医師
松見 泰宇(まつみレディースクリニック三田)

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東京大学医学部卒業、東京大学大学院医学系研究科博士課程(生殖・発達・加齢医学)修了。日本学術振興会特別研究員、スタンフォード大学生殖生理学教室リサーチフェロー、成育医療研究センター特別研究員、埼玉医科大学特別研究員などで研究に従事。東京大学大学院医学系研究科文部教官助手、帝京大学医学部附属溝口病院講師、帝京大学非常勤講師、焼津市立総合病院、武蔵野赤十字病院など総合病院にて勤務。両角レディースクリニック、木場公園クリニックなど不妊クリニックにて勤務。愛育病院、池下レディースクリニックなど周産期医療専門病院および産科クリニックにて勤務。

編集部編集部

不育症とはどのように定義されるのでしょうか?

松見 泰宇先生松見先生

医学的な定義によると、妊娠をしても2回以上の流産や死産を繰り返して元気な赤ちゃんを授かることができない場合を不育症と呼んできました。不妊症と誤解される方も多いのですが、不妊症は妊娠そのものが難しいこと、一方不育症は、妊娠はするけれどその後流産や死産を繰り返してしまうことを言います。

編集部編集部

流産や死産を2回以上繰り返すというのが要件なのですね。

松見 泰宇先生松見先生

新しく、生児獲得歴の有無は問わず、流産または死産が連続していなくても、流産あるいは死産が2回以上あれば不育症と定義されるように改訂されました。1回の自然流産は決して珍しいことではなく、妊娠した人の10~15%に起こるとされています。自然流産の原因はほとんどが胎児の染色体異常であり、多くが偶発的なものです。しかし、流産や死産を繰り返す場合には両親のいずれか、あるいは双方に原因があると考えられます。なお、2回繰り返す確率は1%程度とされています。

編集部編集部

不育症の原因はなんですか?

松見 泰宇先生松見先生

原因はさまざまに考えられますが、病態と治療法という観点からは、「胎児の染色体(つまり、受精卵の遺伝子)に異常がある場合」と「受精卵を受け入れる母体の方に異常がある場合」の大きく2つに分けることができます。不育症として不育症専門の医師が治療にあたる場合、後者を更に分類すると次のように分けられます。

  • 子宮の形態の異常(1)
  • 子宮内の環境の異常

さらに子宮内の環境の異常は大きく分けて3つあります。

  • 内分泌代謝異常(2)
  • 血液凝固異常(3)
  • 免疫の異常(4)

編集部編集部

ということは、不育症の原因は主に4つあるということですか?

松見 泰宇先生松見先生

この4つというのは病態とその治療法で分類した数え方になります。厚生労働省の研究班などの資料では、子宮形態異常、甲状腺異常、染色体異常、抗リン脂質抗体陽性、凝固因子異常、リスク因子不明のカテゴリーで分類されていますが、抗リン脂質抗体が陽性となる抗リン脂質抗体症候群という病気も、血液が固まりやすいという症状になりますので、抗凝固薬を用いて治療するという点では、血液凝固異常に分類されます。胎児の染色体に異常が生じるのは、先程述べた母体側(あるいは父親側)の染色体異常に起因します。染色体異常も全体の5%程度と重要な原因のひとつです。それ以外のリスク因子不明、つまり原因がよくわからない方の割合も全体の半数程度を占めます。ですが、不育症は治療によって、妊娠出産に至ることが可能です。もし妊娠出産を希望する場合には、原因に即した治療法を選択することが必要です。

※この記事はMedical DOCにて<不育症治療を産科医が解説 妊娠後流産を繰り返す原因とは? 検査・治療費はどうなる?>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

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