「お腹の不調」の対処法はご存じですか? 自宅でできるセルフケアや病院での治療法を医師が解説!

便秘や下痢が続くと、お腹が張ったり苦しくなったりするだけでなく、ストレスに感じてイライラしたり、食欲がなくなったりと、心身ともに悪影響を及ぼします。そうしたお腹の不調は、もしかしたら腸の病気かもしれません。今回は、お腹の不調が生じた時の対処法、セルフケアなどについて、「天白宮田クリニック」の宮田先生に解説していただきました。

監修医師:
宮田 雅弘(天白宮田クリニック)
編集部
お腹の不調に対する薬物治療について教えてください。
宮田先生
腸の運動を整える薬やビフィズス菌などの体にとって有用な働きをする菌の製剤(プロバイオティクス)、便の水分バランスを調整する薬などを用います。そのほか、下痢が続く「下痢型」や、便秘が続く「便秘型」など、症状に応じて薬を使い分けます。
編集部
自宅で気をつけるべきことはありますか?
宮田先生
治療で重要なのは、食事療法と運動療法です。炭水化物や脂質を多く含む食事のほか、コーヒー、アルコール、香辛料などをたくさん摂ることで症状が悪化することもあります。そうした傾向がある場合には、それらの食品を控えるようにしましょう。また、適度な運動も症状を軽減するためには必要です。
編集部
食事内容に気をつけることも大切なのですね。
宮田先生
はい、過敏性腸症候群の人は、「低フォドマップ食」を意識することも必要です。
編集部
低フォドマップ食とはなんですか?
宮田先生
F(fermentable)発酵性の糖質
O(oligosaccharides)オリゴ糖(フルクタン、ガラクトオリゴ糖)
D(disaccharides)二糖類(ラクトース)
M(monosaccharides)単糖類(フルクトース)
And
P(polyols:ポリオール)糖アルコール
編集部
具体的には、どのような食品を指すのでしょうか?
宮田先生
オリゴ糖では納豆、キムチ、小麦、玉ねぎなど、二糖類では牛乳やヨーグルトなど、単糖類では果物やはちみつなどがフォドマップ食として挙げられます。ポリオールではキシリトールやソルビトール、マッシュルームなどがあります。これらの食品は小腸では吸収されにくく、過度に取り過ぎると腸が過敏になったり、下痢、便秘などを引き起こしたりすることがあります。
編集部
一般に、体に良いと言われるものが多いですね。
宮田先生
たしかに、これらの食品は通常、体に良いとされています。しかし、過敏性腸症候群の患者さんに限っては、体に悪影響をもたらすかもしれないと言われています。そのため、症状に困っている場合はこれらの食品を減らしてみるのも1つの手だと思います。
編集部
そのほか、過敏性腸症候群の人が気をつけることはありますか?
宮田先生
過敏性腸症候群の人は健康な人と比較して、機能性ディスペプシアや胃食道逆流症を合併するリスクが2倍以上高いとされています。また、うつ状態や不安などの心理的な症状を合併することも多く、そのほか、潰瘍性大腸炎やクローン病が発見される確率も高いことがわかっています。気になる症状があれば、早めに専門医へ相談しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
宮田先生
過敏性腸症候群は患者数が多い疾患ですが、一般の人にはなかなか理解されにくいものだと思います。しかし、放置すると日常生活に支障が出たり、QOLを低下させたりする原因になり得ます。困っている場合は、お早めに消化器内科へご相談ください。
※この記事はMedical DOCにて<お腹の不調は腸が原因? 消化器内科医が過敏性腸症候群などの病気と胃腸の調子の悪さからくる症状を解説>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。