7月以降は要注意!「夏風邪」の種類・それぞれの対処法・受診の目安を医師が解説!
「夏風邪」の種類・それぞれの対処法・受診の目安を医師の丸山先生に解説していただきました。これからの夏本番に向けて、しっかりと感染症の対策をしましょう。
※この記事はMedical DOCにて【その夏バテ、もしかしたらエアコンが原因かも!? 医学的な視点から適切な温度設定や注意点を解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
丸山 潤(医師)
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター
編集部
夏風邪特有のウイルスについて教えてください。どんな病気が考えられますか?
丸山先生
・プール熱(咽頭結膜熱)
夏風邪として知られているプール熱は、主にアデノウイルスによる感染が原因となります。扁桃腺やリンパ腺に影響を与えるアデノウイルスは、痛みや高熱、激しい咳などの症状を引き起こします。子どもたちがプールで感染することがよくあるため、プール熱という名前がついていますが、幼稚園や小学校での集団生活でも感染が広まるものであり、プールに入っていなくても感染する可能性があります。また、大人が感染した場合は扁桃炎や肺炎などを引き起こす可能性があります。
・ ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは夏風邪の代表的な病気であり、主に乳幼児が感染し、夏季に流行します。この疾患は、発熱と口腔粘膜に水疱性の発疹が表れる急性咽頭炎です。口内炎や水疱が口や喉に表れるのが特徴です。ヘルパンギーナの原因とされるウイルスは、コクサッキーウイルスA群が最も一般的な原因とされますが、コクサッキーウイルスB群やエコーウイルスによっても発症することがあります。
・手足口病
手足口病は、口の中や手足に水疱性の発疹が表れるウイルス性感染症であり、夏季に乳幼児を中心に流行します。代表的な原因ウイルスは、コクサッキーウイルスA群やエンテロウイルスです。感染経路は、飛沫感染や接触感染、糞口感染が知られています。集団生活をする保育施設や幼稚園などでの感染が多くみられます。感染後3~5日後に口の中や手のひら、足底や足背などに小さな水疱性の発疹が表れます。発熱は一部の患者さんにみられますが、通常は高熱にはなりません。多くの患者さんは数日間で回復しますが、中枢神経系の合併症や心筋炎を発症するなど、重症化する場合もあります。
編集部
それぞれの対策について教えてください。
丸山先生
まず、プール熱の予防法としては、手洗いとうがいをこまめにおこない、タオルの貸し借りを避けましょう。プールに入った後はシャワーを浴びてウイルスを洗い流し、感染者との密接な接触を避けることが重要です。また、プール施設の衛生状態にも注意することで感染の広がりを抑えることができます。対処法としては、発熱や痛みを伴う症状が表れたら早めに医療機関を受診し、食事は刺激の少ないものを摂り、こまめな水分補給を意識しましょう。アデノウイルスに対する薬は存在しないため、症状が出たら解熱鎮痛剤を使用して回復を待ちます。感染が確認された場合は周囲の人に感染を広げないように、症状が消えてから2日間は登校を控えるようにしましょう。
編集部
ヘルパンギーナに対する対処法はいかがでしょうか?
丸山先生
ヘルパンギーナの感染予防のためには、こまめな手洗いや消毒、うがいが重要です。咳やくしゃみによる感染を防ぐために、マスクの着用が有効です。また、食器やタオルの共用は避け、感染後も2週間程度はウイルスが便や鼻水に含まれているため、感染リスクがある前提で食器や衣服を洗浄するようにしましょう。ヘルパンギーナに対する治療薬はないため、対症療法として解熱鎮痛薬が処方されます。基本的な治療は自然治癒を待ちながら、水分と栄養補給に注意を向けましょう。喉や口内の水ぶくれにより食事が困難になるため、熱い・辛い・塩分の多い食品を避け、柔らかくて咀嚼が少ない食事を摂ることが推奨されています。ヘルパンギーナによる感染力は高いのですが、登園や登校停止は義務付けられていません。ただし、感染の拡大や学校生活への影響がある場合は、学校の判断で出席停止となることもあります。
編集部
最後、手足口病の対処法について教えてください。
丸山先生
手足口病の予防には、飛沫感染や接触感染を防ぐことが重要です。ほかの感染症と同様に、手洗いやうがいを徹底しましょう。手足口病の治療に対する薬はなく、対症療法がおこなわれます。安静にして十分に休み、脱水症状を防ぐために経口補水液で水分と電解質を補給するのがポイントです。喉の痛みが強い場合は、食べやすい柔らかい食材や冷たい食事を摂るのがいいでしょう。栄養補給も重要で、プリンやヨーグルトなどの食べやすい食品を少しずつ摂るように心がけてください。手足口病は治った後も2~4週間ウイルスが排出されるため、しばらくは感染予防策を継続する必要があります。
編集部
受診の目安はありますか?
丸山先生
夏風邪の場合、通常は症状が軽く、自然治癒することが多い傾向にあります。ただし、熱が3日以上続く場合や39℃以上の高熱が出る場合、呼吸困難や激しい咳がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。また、強い喉の痛みや嚥下困難があり、飲み物や食べ物が摂れずに脱水が強い場合は、点滴をする必要が出てくることもあるので、受診を検討してください。症状が長期間続く場合は夏風邪以外の病気が隠れている可能性があるため、医師の診察が必要です。